恋色カフェ
期待しつつフロアに降りると、微かに漂ってきたのは、いつもと違う香り。
それがメニューに載っていないことを不思議に思ったのか、キョロキョロと店内を見回しているお客様も見受けられた。
「高宮さん、こっちっす」
見れば、木製フレームに帆布が張られているパーティションから、ひょこりと顔を出した勝沼君が私を見つけ、手招きしている。
なるほど、スタッフ用に席を確保して、パーティションで見えないようにしたのか。
「勝沼君と、休憩一緒だったんだ」
「そうっすね」
勝沼君もここに来たばかりだったらしく、エプロンを外しながらそう言って、笑顔を見せた。
──ああ、その顔。
森谷店長が“同じ種類”と思ったのも頷ける気がする。