シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「これ貰って下さい!」
綺麗な紙に包まれた贈り物を差し出して、若い兵士が照れている。
「あ・・・ありがとうございます。でも、ごめんなさい。何も戴いてはいけないと、言われていますので・・・。本当、ごめんなさい」
申し訳なさそうに胸の前で手を合わせて謝るエミリー。
兵士は何か言いたげな瞳を向けるが、エミリーの背後をチラッと見て、諦めたように俯くと、大人しく椅子に座った。
暫くの後、兵士が名残惜しげにアメジストの瞳を見つめて去っていくと、次は掌を怪我していた、あの使用人の番だ。
「これ受け取って下さい。朝市で買って来たんだ」
顔が隠れるほどの腕いっぱいの花を抱えて差し出した。
「ごめんさない。もう―――」
エミリーは周りを見渡しながら、両手を横に振って断った。
部屋の中は、すでに昨日貰った花でいっぱい。
これ以上置くと棚の開閉が出来なくなり、業務に支障が出てしまう。
「そんなこと言わないで・・・。そうだ、受け取ってくれなくてもいいから、今度一緒に城下に行ってくれないか?」
花束から覗く顔は、華奢な身体の向こうから放たれるプレッシャーをものともせず、満面の笑顔を浮かべている。
「待て。デートの誘いは禁止だ。お前は、これ以上話しかけるな」
細い肩の向こうから、厳しい声色が放たれた。
満面の笑みが見る間に萎んでいく。
花束を腕から零すと、促されるまま項垂れるように椅子に座った。
「ほら、こっち向いて口を開けて」
フランクが忌々しげに使用人の顔を正面に向ける。
目の前にある大量の花で診察がし難いのか、大袈裟にため息を吐くと、邪魔だとばかりに脇にドサッと置いた。
エミリーが医務室でフランクを手伝い始めて、今は三日目。
一日目は何事も無かったが、昨日から城の男たちが訪れるたびに贈り物を持ってきて困っている。
それも、何故か皆リングを贈り物の中に入れているようで、何か意味があるのか分からないが、何とかして渡そうとしているようだ。
部屋の中に飾ってある花にも忍ばせてあったし、勿論さっきの綺麗な包みの中にもあるだろう。
あの嵐の日から10日。災害処理の都合などで、予定が延びていた健康観察が医務室で行われていた。
エミリーはその助手をしている。
”あなたがいれば、スムーズに診察が進みます。是非お願い致します”
打ち合わせの時にそう言われたのだが、本当にスムーズなのか、これでは疑問に思ってしまう。
後ろに控えているウォルターも、さっきからずっと不機嫌な顔をしている。
やっぱりあの時、断っておけば良かったかしら。
―――あの時・・・あれは四日前の朝食の席でのこと。
アランが珍しく不機嫌そうな顔をして、聞いてきた。
「フランクが、暫く君に仕事を手伝って欲しいと願い出ているが――」
綺麗な紙に包まれた贈り物を差し出して、若い兵士が照れている。
「あ・・・ありがとうございます。でも、ごめんなさい。何も戴いてはいけないと、言われていますので・・・。本当、ごめんなさい」
申し訳なさそうに胸の前で手を合わせて謝るエミリー。
兵士は何か言いたげな瞳を向けるが、エミリーの背後をチラッと見て、諦めたように俯くと、大人しく椅子に座った。
暫くの後、兵士が名残惜しげにアメジストの瞳を見つめて去っていくと、次は掌を怪我していた、あの使用人の番だ。
「これ受け取って下さい。朝市で買って来たんだ」
顔が隠れるほどの腕いっぱいの花を抱えて差し出した。
「ごめんさない。もう―――」
エミリーは周りを見渡しながら、両手を横に振って断った。
部屋の中は、すでに昨日貰った花でいっぱい。
これ以上置くと棚の開閉が出来なくなり、業務に支障が出てしまう。
「そんなこと言わないで・・・。そうだ、受け取ってくれなくてもいいから、今度一緒に城下に行ってくれないか?」
花束から覗く顔は、華奢な身体の向こうから放たれるプレッシャーをものともせず、満面の笑顔を浮かべている。
「待て。デートの誘いは禁止だ。お前は、これ以上話しかけるな」
細い肩の向こうから、厳しい声色が放たれた。
満面の笑みが見る間に萎んでいく。
花束を腕から零すと、促されるまま項垂れるように椅子に座った。
「ほら、こっち向いて口を開けて」
フランクが忌々しげに使用人の顔を正面に向ける。
目の前にある大量の花で診察がし難いのか、大袈裟にため息を吐くと、邪魔だとばかりに脇にドサッと置いた。
エミリーが医務室でフランクを手伝い始めて、今は三日目。
一日目は何事も無かったが、昨日から城の男たちが訪れるたびに贈り物を持ってきて困っている。
それも、何故か皆リングを贈り物の中に入れているようで、何か意味があるのか分からないが、何とかして渡そうとしているようだ。
部屋の中に飾ってある花にも忍ばせてあったし、勿論さっきの綺麗な包みの中にもあるだろう。
あの嵐の日から10日。災害処理の都合などで、予定が延びていた健康観察が医務室で行われていた。
エミリーはその助手をしている。
”あなたがいれば、スムーズに診察が進みます。是非お願い致します”
打ち合わせの時にそう言われたのだが、本当にスムーズなのか、これでは疑問に思ってしまう。
後ろに控えているウォルターも、さっきからずっと不機嫌な顔をしている。
やっぱりあの時、断っておけば良かったかしら。
―――あの時・・・あれは四日前の朝食の席でのこと。
アランが珍しく不機嫌そうな顔をして、聞いてきた。
「フランクが、暫く君に仕事を手伝って欲しいと願い出ているが――」