シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
ブルーの瞳がどこか不安げに、テーブル越しに見つめている。

「フランクさんが?何をするのか分かりませんけど、やってみたいです。でも、アラン様は・・・?」

いいんですか?とでも言いたげに、首を傾げて見つめ返すアメジストの瞳。

すると、何故か、テーブルの向こうで額を抑えて俯いてしまった。

「アラン様・・・・?」


「・・・給仕は、もう下がって良い」


その命に、給仕たちが互いに顔を見合わせた後、頭を下げて退室していった。

食堂の中が二人だけになったのを確認すると、席を立ってテーブルの向こうから、こちら側に来た。


「君が、そう希望するのなら、私には止めることが出来ぬ・・・。だが、頼むことは出来る・・・」

椅子の傍らで跪き、手を握りながらブルーの瞳が優しく語りかけてくる。

無意識なのか、どうなのか、アランの右手が自然に動き始めた。

武骨な指が頬をスッと撫でると、ブロンドの髪を優しく梳く。

ふわふわの巻き毛をすくい取り、形のいい小ぶりな耳にかける。


その所作に、それだけのことなのに、何故か胸の奥がジンと痺れてしまう・・・。

ただ髪を触られてるだけなのに、頬が染まってしまう―――


「ぁ・・・アラン様?・・手を、その・・・」

小さく呟くような訴えを無視し、髪を梳く武骨な手は止まらない。


愁いを湛えたブルーの瞳がアメジストの瞳をじっと見つめる

「仕事は健康観察の助手だ。これは、城中の者が医務室に訪れる。私は、できれば―――」

「あの・・・是非、やらせてください」


これ以上触れられていたら、さっきから脈打っている心臓がおかしくなってしまいそう。

何か言いかけていたのを、思わず遮ってしまったけど・・・怒ってしまったかしら。


「分かった。そのように、申し伝えておく」

不安げな瞳を向けるエミリーに、柔らかな微笑みを残し、名残惜しそうに髪からゆっくり手を離すと、口元に手を当てながら自席に戻っていった。


「しかし・・・」などと、何やらぶつぶつ言っているのがテーブルの向こうから聞こえてくる。


―――妹みたいに思ってくれていて、いつも守ってくれている。

医務室の手伝いは、多くの目に触れることだから、やっぱり断った方がいいのかしら。

何故か周りの人は皆、人目に触れることを避けさせる。


それは、わたしが異国の人だから―――?

< 111 / 458 >

この作品をシェア

pagetop