シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
フランクに呼ばれ、治療室の中に入ると、ワゴンの上に小さな包みが数個置かれていた。

「今朝見つけた物です。彼女にと、医務室の前に置かれていました。失礼ながら中身を拝見したところ、手紙とリングが入っておりました」

ウォルターは手紙を受け取り、サッと一読すると、ポケットに仕舞った。

「これは、エミリー様には見せない方がいいですね。私が預かっておきます」

―――冗談ではない。こんな半分脅しのような手紙、見せられるはずがない。

手紙には、エミリー様を思う気持ちが切々と綴られ、何時のどこどこで待っているから必ず来て欲しい。

来てくれないと死ぬみたいなことが書かれていた。

こんなに人を惹きつけてしまうとは・・・これは、かなりやばい。

やはり、早く塔のお部屋に戻っていただかなければ―――


「―――エミリー様!?」


ウォルターの顔が一気に青ざめていく。忙しく彷徨うように瞳が動く。

エミリー様がいない―――どこに―――!?

廊下に通じる扉に手をかけるが、何故か押しても引いてもビクともしない。

焦りながらウォルターは扉に体当たりを始めた。

その尋常でない音に気付いたフランクが、医務室にやってきた。


「フランク、エミリー様が攫われた!」

唇を噛みしめ、辛そうな表情を浮かべるウォルター。

―――迂闊だった・・・一人にするべきではなかった。

だが、後悔してても遅い。なんとかここから出て、早く追いかけなければ。

状況を知ったフランクの顔も一気に青ざめていく。

「大変だ!私も一緒に―――」

二人で力を合わせて何度か体当たりをすると”カラン・・・”と廊下の方で音がした。

やっと動く扉を力任せに押し開け、廊下に飛び出た。


すると三人の男に、口を塞がれて連れられて行く姿が遠くに見えた。

すでに廊下の向こう、角を曲がっていこうとしている。

中の一人がこちらに気づいたようだ。驚いた表情を見せ「急げ!」と仲間を急かし、担ぎあげて走っていく。

「待て!!」必死で追いかけるウォルターの眼の端に、所在なさげに佇むメイドの姿が映った。


―――チッ・・・!


角を曲がって玄関に辿り着いた時には、すでに彼らの姿はなく、玄関の警備兵が力なくその場にうずくまっていた。

「おい!!起きろ!貴様ら、何をしていた!?何があった!?」

「う・・・」うめき声をあげ、頭をさすりながら起き上がる兵士。

「申し訳ありません―――」頭を抑え顔を歪める兵士。

ウォルターは再び舌打ちすると、馬小屋まで走り、馬に飛び乗った。

びっくりした馬がいななきを上げ、前足を上げて大きく馬体を跳ね上げる。

それを慣れた手つきで落ちつかせ、足で馬を急かし、城門まで全力で走らせた
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