シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
城門には腕利きの警備兵がいる。

彼らが必ず止めてくれるはず。

それに、二人乗りならまだ遠くに行けていないはずだ。

頼む、間に合ってくれ―――!

歯を食いしばり、焦るウォルターの瞳に、遠くに映る城門。

そこで、敵の乗る三頭の馬と数名の警備兵が揉めていた。

城門を突破しようとする馬、それを阻止しようとする警備兵。

何度か剣が動き、日の光に煌いている。


「そいつらを出すな!!」

叫びながら馬を走らせるウォルター。


しかし、乗せられているエミリーの身体を気遣い、遠慮がちに繰り出される剣は弱く、軽くいなされてしまっている。

やがて城門を突破していく二頭の馬。

一頭は警備兵たちが何とか男を引きずり降ろし、羽交い締めにしようとしていた。


「そいつを逃がすな!!私は奴らを追う!お前は、急ぎパトリック様に連絡を!」


兵達に指示を出すと、ウォルターは再び馬をけしかけた。


辺りは夕闇に染まり始めている。

日が沈んでしまったら視界が悪くなり、厄介だ。急がなければ―――

焦る瞳に、漸く遠くに馬を走らせる二人の男の背中が見えて来た。


「待て!!」

ウォルターの叫びに、前方で男が一人振り返ると、何やら会話を交わしている。

暫くすると、一人が馬を止めて道に立ちはだかった。

「ここから先は通さない」

不敵な笑みを浮かべ、男が睨みつける。

「お前たちは何者だ。エミリー様をどこに連れていく気だ?」

剣を抜き、男の様子を注意深く伺う。


「言う必要はない!」


叫びながら男は両手で剣を抜き、素早くウォルターに斬りかかった。

寸でのところで男の放つ剣を二度受け切り、何とかかわすウォルター。


「ほう・・・この私の剣を避けるとは・・・・これは、本気でやらせてもらうぞ!」

男の二刀流の剣さばきに翻弄され、何とか凌いではいるものの、劣勢なのは明らかだった。

息を切らし、馬の背の上で、繰り出される攻撃をかわし続けていたが、とうとう男の剣がウォルターの体を捉えた。


―――辺りに真っ赤な鮮血がほとばしる―――

顔を歪め、腕を抑えて男を悔しげに睨みつけるウォルター。

それを一瞥すると、男は剣を仕舞い、馬を走らせて夕闇の向こうに消えていった。
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