シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
カタン・・・コト・・・。

「メイ・・・?今日は早いのね・・・」

まだ醒めきっていない身体を気だるそうに動かし、音のする方に瞳を向けた。

ぼんやりとする視界に映るのは、いつも見慣れたベッドの天蓋ではなく、薄汚い天井と、薄汚い家具。


―――っ!ここは、何処!?

メイがいると思っていた方には、がっしりとした男の背中があった。

横たわっているベッドの傍の壁には、板でしっかりと塞がれている窓らしきもの。

信じたくない光景に、アメジストの瞳を何度も瞬かせた。

「起きたか」

言いながら振り返った男の顔を見た、エミリーの瞳が大きく見開かれ、身体をガバッと起こして布団をギュッと手繰り寄せた。


「あ・・・あなたは―――」

あの時の兵士。健康観察でもウォルターが気をつけるようにと言っていた、あの男。


―――そう言えば、わたし・・・あの時、あのメイドに呼ばれて廊下に出たら・・・あっという間に三人の男に囲まれて、口を塞がれて・・・その後は・・・。


「ここは、どこですか?わたしを、どうするつもりですか?」

コップの水と皿に載せたパンを差し出してきた男を睨み、小さいけれどもはっきりと響く声で問いかけた。

差し出されるパンや水を受け取る気配は微塵もない。

その様子に、男は諦めたように傍らのテーブルにコップと皿を置くと、エミリーを見下ろした。

「あんたは、俺がここに攫ってきた。もうすぐ、主に引き渡す手はずになっている。ここは、街外れの使われてない屋敷さ。助けは来ないと思った方がいい」

そう言い放つと、男は椅子にドカッと腰掛けた。

「言っとくが、ここは2階だ。その窓を破っても、外には出られないぞ」

ベッドの脇の壁を見ていたエミリーの心の内を見透かすように、男は言った。

「それに、もうすぐここから移動する。逃げることは諦めるんだな」

そう言うと、男は黙々とパンと水を貪った。


「おい、移動するぞ」

不意に扉が開かれ、また、見覚えのある男が入ってきた。

二人とも城に仕えていた人たち。アランの下で剣を振るっていた人たち。

その人たちに裏切られたなんて知ったら、どんなに悲しむだろう。

唇を噛みしめ、男たちを睨みつけた。

「そんな顔したって、怖くもなんともないさ。ちょっと失礼するよ」

言いながら長い布を手にした男の腕が目の前に迫った。

目と口に布が巻かれ、視界を奪われ、腕も縛られてしまった。

そして腰のあたりに当てた腕一本で、軽々と身体が抱き上げられた。

突然の浮遊感に、バタバタともがき動く足を、動かないように、もう一方の腕ががっしりと捕える。


「怪我をしたくなかったら、動くな」

脅すような声の響きに、身体が震えてしまう。

こうして、しっかり拘束された身体は抵抗する力を、奪われた。
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