シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
シルヴァの穏やかだった表情が、獰猛なものに豹変した。
「ご存じの通り、私は城など簡単に侵入できる賊を雇うことができる。あなたを攫ったのも、賊の一味だ」
ブラウンの瞳に鋭い光をたぎらせたその表情に、背筋に悪寒が走ってしまう。
「メイには、手を出さないで!」
―――メイは、唯一心を許せる人。
この国に来て、身寄りのないわたしに優しく接してくれた人。
眠れないときは夜遅くまで話相手をしてくれたり、励ましてくれたり、時には叱ってくれたりもした。
何でも相談したし、中には内緒のこともあったけど、メイには何でも話した。
友達であり、お姉さんであり、お母さんでもある。私の大切な・・・大切な人・・・。
”エミリー様”瞳を閉じるとメイの明るい笑顔が思い浮かぶ。
明るい声が鮮明に思い出される。
わたしのために危険な目に合わせるなんて、そんなことは絶対に出来ないし、させない―――
「メイには、何もしないで。もし何かしたら、私はあなたを許さない」
唇をキュッと結び、獰猛な笑みを浮かべているシルヴァを、キッと睨んだ。
「ふっ・・・あなたが私の言うことを聞いて大人しくしていれば何の問題もない。聖なる月の日まで時間はたっぷりとある。ゆっくりと私を理解し、私を愛せ。その腕のリングがある限り、あなたは私のものだ」
ゆっくりとソファから立ち上がって、言い含めるように語りながら、一歩一歩近づいてくる。
エミリーは前を見据えたまま微動だにしない。
シルヴァはリングの嵌められた手首をガシッと掴むと、恭しく持ち上げて愛しげに頬ずりした。
そしてチュッとリップ音をさせ、白く美しい手の甲に口づけをした。
その行為に、唇を噛みしめて顔をそらし、耐えるエミリー。
アメジストの瞳には、今にも零れそうなほどに雫を湛えている。
シルヴァはその様子を満足そうに見つめると、青ざめた頬に掌を当てて、無理やり自分の方に向けた。
「それでいい。今からメイドが部屋に来る。あなたは私と結婚の約束をしているが、先日の嵐のショックで記憶を失ったことになっている。私のことも自分のことも、何も分からない。いいね?余計なことは何も話さないことだ」
無言のまま、掌の中の頭が僅かに縦に揺れた。
アメジストの瞳が涙に濡れ、ゆらゆらと揺れる。
「あなたは美しい。一目見たときから・・・私は、あなたを愛している」
ぼそっと呟き、愛しげに見つめると額に口づけをした。
そして部屋から出ると、使用人の名を呼んだ。
「ハンナはいるか?彼女に食事を持ってきてくれ」
「ご存じの通り、私は城など簡単に侵入できる賊を雇うことができる。あなたを攫ったのも、賊の一味だ」
ブラウンの瞳に鋭い光をたぎらせたその表情に、背筋に悪寒が走ってしまう。
「メイには、手を出さないで!」
―――メイは、唯一心を許せる人。
この国に来て、身寄りのないわたしに優しく接してくれた人。
眠れないときは夜遅くまで話相手をしてくれたり、励ましてくれたり、時には叱ってくれたりもした。
何でも相談したし、中には内緒のこともあったけど、メイには何でも話した。
友達であり、お姉さんであり、お母さんでもある。私の大切な・・・大切な人・・・。
”エミリー様”瞳を閉じるとメイの明るい笑顔が思い浮かぶ。
明るい声が鮮明に思い出される。
わたしのために危険な目に合わせるなんて、そんなことは絶対に出来ないし、させない―――
「メイには、何もしないで。もし何かしたら、私はあなたを許さない」
唇をキュッと結び、獰猛な笑みを浮かべているシルヴァを、キッと睨んだ。
「ふっ・・・あなたが私の言うことを聞いて大人しくしていれば何の問題もない。聖なる月の日まで時間はたっぷりとある。ゆっくりと私を理解し、私を愛せ。その腕のリングがある限り、あなたは私のものだ」
ゆっくりとソファから立ち上がって、言い含めるように語りながら、一歩一歩近づいてくる。
エミリーは前を見据えたまま微動だにしない。
シルヴァはリングの嵌められた手首をガシッと掴むと、恭しく持ち上げて愛しげに頬ずりした。
そしてチュッとリップ音をさせ、白く美しい手の甲に口づけをした。
その行為に、唇を噛みしめて顔をそらし、耐えるエミリー。
アメジストの瞳には、今にも零れそうなほどに雫を湛えている。
シルヴァはその様子を満足そうに見つめると、青ざめた頬に掌を当てて、無理やり自分の方に向けた。
「それでいい。今からメイドが部屋に来る。あなたは私と結婚の約束をしているが、先日の嵐のショックで記憶を失ったことになっている。私のことも自分のことも、何も分からない。いいね?余計なことは何も話さないことだ」
無言のまま、掌の中の頭が僅かに縦に揺れた。
アメジストの瞳が涙に濡れ、ゆらゆらと揺れる。
「あなたは美しい。一目見たときから・・・私は、あなたを愛している」
ぼそっと呟き、愛しげに見つめると額に口づけをした。
そして部屋から出ると、使用人の名を呼んだ。
「ハンナはいるか?彼女に食事を持ってきてくれ」