シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「シルヴァ様・・・お願い・・・もう・・もう・・・」
頬を紅潮させ、潤んだ瞳で息も絶え絶えに訴える、悩ましげな女の声。
「もうダメなのか・・・カリン、可愛い奴め」
息も荒く、苦しげに眉を寄せる女の耳元で囁く甘い声。
城下の繁華街から少し離れたギディオンの街の中。
エミリーがいるところよりも少し離れた場所にある、広い屋敷。
綺麗に手入れされた庭の池に二つの月が映る夜。
豪華な寝室の床には、上等な女物の服が投げ置かれている。
大きなベッドは激しく軋み、広い背中には細い腕が絡んでいた。
数刻後、ぼんやりと天井を見つめる潤んだ瞳の横に、引き締まった体は投げ出されるように横たわった。
「シルヴァ様、今日はいつになく激しくて・・・何か良いことあったのですか?」
投げ出されている腕にほんのり染まった頬を預け、うっとりと見上げる。
鍛えられて引き締まった体・・・野心を持った生命力溢れる精悍な顔・・・逞しい胸を細く長い指が愛しげにスーッと撫でる。
「分かるか?私は、探し求めていた者を、漸く手に入れることができたんだ。これで祖父との約束を守ることができる。父上は、古い言い伝えなど信じておられなかったが。これでやっと、先祖の悲願を叶えることが出来る―――」
男の瞳がギラギラと獰猛に輝く。
「まぁ、素敵・・・で、それって何ですか?」
「“月の乙女”だ。言い伝え通りならサルマンの願いが叶う」
キラキラと希望に輝く男の顔。
腕の中の女は眠いのか、瞳がとろんとしてきた。
「月の・・・?・・いい・ですね・・・」
女の瞳がゆっくりと閉じられていく。男の話を全く聞く様子がない。
やがて腕の中で幸せそうな寝息を立て始めた。
「・・・おい!起きろ。ここで寝るんじゃない。帰れ!」
頬が預けられている腕を、乱暴に引き抜いた。
心地よい眠りを誘っていた温もりが急に消え、頭がガクンと落ちた衝撃に驚いて身体を起こす女。
「どうして?いつも泊めて下さるのに」
するとシルヴァは早く帰れと言わんばかりに、つい今しがた自らが剥いだ衣服を、乱暴にベッドの上に投げ置いた。
「もう、ここには来るな」
突き放すように言う表情はとても冷たい。
急に態度が変わった・・・何か怒らせるようなことをしただろうか。
女はすがるような瞳でシルヴァを見つめた。
「シルヴァ様。もう、私に飽きてしまったのですか?」
さっきまであんなに幸せそうだったのに、今は悲しそうに頬を涙で濡らしている。
無言のままのシルヴァ・・・女は美しい顔を歪め、溢れる涙を拭いながら急いで服を身につけた。
そしてもう一度哀しそうに振り返ると、パタパタと音を立てて出ていった。
頬を紅潮させ、潤んだ瞳で息も絶え絶えに訴える、悩ましげな女の声。
「もうダメなのか・・・カリン、可愛い奴め」
息も荒く、苦しげに眉を寄せる女の耳元で囁く甘い声。
城下の繁華街から少し離れたギディオンの街の中。
エミリーがいるところよりも少し離れた場所にある、広い屋敷。
綺麗に手入れされた庭の池に二つの月が映る夜。
豪華な寝室の床には、上等な女物の服が投げ置かれている。
大きなベッドは激しく軋み、広い背中には細い腕が絡んでいた。
数刻後、ぼんやりと天井を見つめる潤んだ瞳の横に、引き締まった体は投げ出されるように横たわった。
「シルヴァ様、今日はいつになく激しくて・・・何か良いことあったのですか?」
投げ出されている腕にほんのり染まった頬を預け、うっとりと見上げる。
鍛えられて引き締まった体・・・野心を持った生命力溢れる精悍な顔・・・逞しい胸を細く長い指が愛しげにスーッと撫でる。
「分かるか?私は、探し求めていた者を、漸く手に入れることができたんだ。これで祖父との約束を守ることができる。父上は、古い言い伝えなど信じておられなかったが。これでやっと、先祖の悲願を叶えることが出来る―――」
男の瞳がギラギラと獰猛に輝く。
「まぁ、素敵・・・で、それって何ですか?」
「“月の乙女”だ。言い伝え通りならサルマンの願いが叶う」
キラキラと希望に輝く男の顔。
腕の中の女は眠いのか、瞳がとろんとしてきた。
「月の・・・?・・いい・ですね・・・」
女の瞳がゆっくりと閉じられていく。男の話を全く聞く様子がない。
やがて腕の中で幸せそうな寝息を立て始めた。
「・・・おい!起きろ。ここで寝るんじゃない。帰れ!」
頬が預けられている腕を、乱暴に引き抜いた。
心地よい眠りを誘っていた温もりが急に消え、頭がガクンと落ちた衝撃に驚いて身体を起こす女。
「どうして?いつも泊めて下さるのに」
するとシルヴァは早く帰れと言わんばかりに、つい今しがた自らが剥いだ衣服を、乱暴にベッドの上に投げ置いた。
「もう、ここには来るな」
突き放すように言う表情はとても冷たい。
急に態度が変わった・・・何か怒らせるようなことをしただろうか。
女はすがるような瞳でシルヴァを見つめた。
「シルヴァ様。もう、私に飽きてしまったのですか?」
さっきまであんなに幸せそうだったのに、今は悲しそうに頬を涙で濡らしている。
無言のままのシルヴァ・・・女は美しい顔を歪め、溢れる涙を拭いながら急いで服を身につけた。
そしてもう一度哀しそうに振り返ると、パタパタと音を立てて出ていった。