シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
ここに連れてこられて、もう五日経っている。

シルヴァの言う聖なる月の日というのは、あと3週間先らしい。

シルヴァは毎日欠かさずここに来て、一日中何をするでもなく隣に座っていたり、時には仕事のようなものをしている。

“私のことを知って貰う”と言った割には何も話さないし、逆にわたしのことも何も聞いてこない。

最初会ったとき、あれだけ一人で喋っていたのに。

同じ人物だとはとても思えない。


「あの・・・どうして、わたしなんですか?」

前から疑問に思っていたことを、思い切って尋ねてみた。

隣に座っているシルヴァは、読んでいた本から目を離し、パタンと閉じるとテーブルの上に投げ置いた。

「そうだな。あなたも知っておくべきだ。あなたは私の探し求めていた、サルマン家言い伝えの“月の乙女”だ」

今までに見たこともない真剣な表情を見せ、シルヴァはゆっくりと語り始めた。


「――昔、サルマンの先祖はギディオンの城の要職に就いていた。

部下からの信望も厚く、国王からも信頼されていたらしい。

ある日、代々伝わるリンク王のリングが盗まれる事件が起きた。

宝物庫で、厳重に管理していたはずなのに。

宝物庫の管理はサルマンの大事な仕事の一つ。先祖は八方手を尽くして必死にリングを探した。

が、見付からず、あろうことかサルマンが盗んだことにされていた。

それは、以前から対立していた大臣に嵌められたためだが。

それを知らない時の国王は、大変激怒され、サルマンは城を追われ、財も家も奪われ、文字通り何もかもを失った。

職もなく金もない。打ちひしがれ街を彷徨うサルマンに、切なる願いが生まれた。

”このまま汚名を着せられたままでは、死ぬに死ねない。私は誓う。いつかサルマンの家に権力を復活させることを。私を追放した城の者を見返し、王家に復讐することを―――”


恨みを持ち願いを叶えるため必死で生きた。

その時占い師から受けた預言が、今もサルマン家の言い伝えに残っている。


”今からこの後現れる月の乙女の身も心も制すべし。さすれば願いが叶うであろう”と―――

あなたはその“月の乙女”だ。私の願いは先祖の願いを叶えること。

今の王家を追放し、我がサルマン家が国を手に入れることだ。

これで王家への復讐は果たされる。あなたは、その手伝いをすることになる」


ブラウンの瞳に真摯な色が宿り、嘘ではないことを物語る。

「わたしが”月の乙女”?そんな・・・何を証拠に?」

アメジストの瞳が空を彷徨う。


「言い伝えられているように、あなたはこの国に現れた。占い師の見立て通り、間違いなく月の乙女。シェラザードの化身だ」
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