シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
二つの噴水が夕日に赤く染まる頃。
広大な庭の端にある庭用具用の物置小屋。
そこに辺りを警戒するように見回しながら入る人影が一つ。
「お呼びですか」
「何で呼ばれたか分かっているだろう?」
「・・・・」
「何をしようとしたんだお前は!何のために我々がここに来たと思っているんだ」
「でも、もう我慢できません!あんな、あんな・・・っ!」
「お前の気持ちは分かる。私だって・・・だが、あの方が我慢しておられるのに、それを無駄にするようなことは、しちゃいけない」
「でも・・・・」
「一番辛い思いをしているのは、あの方だ。いいか?この先何があっても、我慢するんだぞ。早まったことはするんじゃない」
「でもあの方も、きっと本当はそうしたいと思っている筈です」
「例えそうだとしても、だ。勝手なマネはダメだ。」
諭すような落ちついた声と、若く血気盛んな声。
小さな声で交わされる会話は、この後も暫く続いていく。
夕日はすっかり沈み、ギディオンの国が暗闇に包まれていく。
同じ頃、少し広めの部屋の中で、灯りも着けずにソファに座る人影が一つあった。
窓の外のテラスが月明かりに明るく浮かび上がる。
スポットライトを浴びているかのように、はっきりと瞳に映る丸いテーブルと椅子。
この人影は、もう随分長い時をここで過ごしていた。
真っ直ぐに向けられた、その憂いを帯びた瞳に浮かぶのは、日だまりの中でそよ風に揺れる艶めくブロンドの髪。
そこにいるだけで、幸せな気持ちにさせてくれる存在。
想うだけで心臓が痛くなる存在。
もしも、その身に小さな傷が一つでも付いていたら。
もしも、瞳を曇らせるようなことをしていたら。
―――――っ!
想像するだけで、こんなに気持ちが昂る。
こんなに心が騒ぎ立てる。“奴を許すな”と。
だが相手はこの国の重鎮。事は慎重に穏便に、誰もが納得する形で終えなければならない。
しかし、私は、自分を抑えることが出来るだろうか―――
コンコン・・・
「・・・入れ」
「失礼致します・・・っ!・・」
部屋の中に静かに放たれていた冷たい殺気に思わず口ごもる兵士。ピリピリとした空気に、言葉を失ってしまう。
座って前を見据えたまま、微動だにしない。オーラはますます昂っている。
「用件を早く申せ」
「も・・・申し訳ありません!国王様がお呼びでございます」
「――今、参る」
広大な庭の端にある庭用具用の物置小屋。
そこに辺りを警戒するように見回しながら入る人影が一つ。
「お呼びですか」
「何で呼ばれたか分かっているだろう?」
「・・・・」
「何をしようとしたんだお前は!何のために我々がここに来たと思っているんだ」
「でも、もう我慢できません!あんな、あんな・・・っ!」
「お前の気持ちは分かる。私だって・・・だが、あの方が我慢しておられるのに、それを無駄にするようなことは、しちゃいけない」
「でも・・・・」
「一番辛い思いをしているのは、あの方だ。いいか?この先何があっても、我慢するんだぞ。早まったことはするんじゃない」
「でもあの方も、きっと本当はそうしたいと思っている筈です」
「例えそうだとしても、だ。勝手なマネはダメだ。」
諭すような落ちついた声と、若く血気盛んな声。
小さな声で交わされる会話は、この後も暫く続いていく。
夕日はすっかり沈み、ギディオンの国が暗闇に包まれていく。
同じ頃、少し広めの部屋の中で、灯りも着けずにソファに座る人影が一つあった。
窓の外のテラスが月明かりに明るく浮かび上がる。
スポットライトを浴びているかのように、はっきりと瞳に映る丸いテーブルと椅子。
この人影は、もう随分長い時をここで過ごしていた。
真っ直ぐに向けられた、その憂いを帯びた瞳に浮かぶのは、日だまりの中でそよ風に揺れる艶めくブロンドの髪。
そこにいるだけで、幸せな気持ちにさせてくれる存在。
想うだけで心臓が痛くなる存在。
もしも、その身に小さな傷が一つでも付いていたら。
もしも、瞳を曇らせるようなことをしていたら。
―――――っ!
想像するだけで、こんなに気持ちが昂る。
こんなに心が騒ぎ立てる。“奴を許すな”と。
だが相手はこの国の重鎮。事は慎重に穏便に、誰もが納得する形で終えなければならない。
しかし、私は、自分を抑えることが出来るだろうか―――
コンコン・・・
「・・・入れ」
「失礼致します・・・っ!・・」
部屋の中に静かに放たれていた冷たい殺気に思わず口ごもる兵士。ピリピリとした空気に、言葉を失ってしまう。
座って前を見据えたまま、微動だにしない。オーラはますます昂っている。
「用件を早く申せ」
「も・・・申し訳ありません!国王様がお呼びでございます」
「――今、参る」