シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「御機嫌麗しゅうございます。お待たせし申し訳御座いません」
床に跪いて恭しく頭を下げるシルヴァ。
後方でバトラーもそれに倣って頭を下げていた。
部屋の真ん中のソファに座るアラン。脇にはパトリックが立ち、兵士四人が二人の脇に立っていた。
「私に用事がございますならば、わざわざ此方に出向かれなくても。私の方から城に参上致しますのに」
跪いたままブラウンの瞳がブルーの瞳を見据えていた。
「久しぶりだな、シルヴァ。先の月祭り以来か」
「パトリック様も御機嫌麗しく、本日はお二人揃って我が屋敷に何の用向きで御座いましょうか」
「国王からの書状を届けに参った。パトリック、例の物を」
「書状、でございますか?」
てっきり取り戻しに来たのだと思っていたシルヴァは、拍子抜けした声を出した。
「すぐに返事を戴きたい」
パトリックは書状を渡しながら、後ろに控えているバトラーを一瞥した。
シルヴァは書状を早速開いて一読すると、立ち上がって書状を仕舞いながらパトリックに微笑んだ。
「承知致しました。後日必ず手配する、とお申し伝え下さい」
口元とは裏腹に、その目は少しも笑っていない。
「用向きはこれだけで御座いますれば、私は人を待たせておりますので、これで失礼致します。あとはバトラーが応対致します」
もう一度跪いて、アランに向かって丁寧に頭を下げると、サッと立ちあがった。
「待て!我々がここに参ったのは、もう一つ用件があるためだ。寧ろ、こちらの方がメインと言った方が、君には分かり易いかな?・・・我々は、人を探しに参った」
パトリックの瞳がブラウンの瞳を射るように見据える。
「・・・恐れながら、私には何のことか分かりません。あなた様のお探しするような高貴な方は、ここには居られません。もしや、何か勘違いをされているのでは御座いませんか?」
ブラウンの瞳が不敵な光を湛え、パトリックを睨み返す。
さすがに生まれながらの貴族なだけあり、パトリックの放つ威厳にも全く怯む様子がない。
「外に、仕立屋の荷車を見かけたが、君が待たせている人と言うのは仕立屋か?察するに、大層な荷物を運んだと見える」
「いえ、仕立屋などではなく―――・・・兎に角あなた様のご期待に沿うようなことは、ここには御座いません。どうか、お引き取りを。バトラー、後を頼む」
踵を返し、扉の取っ手に手をかけるシルヴァ。
扉を開けようとするその手を止めたのは、静かに放たれた威厳のある声。
それには、ここに来てずっと抑えていた殺気をも含んでいた。
「待て。まだ用向きは済んではおらぬ」
床に跪いて恭しく頭を下げるシルヴァ。
後方でバトラーもそれに倣って頭を下げていた。
部屋の真ん中のソファに座るアラン。脇にはパトリックが立ち、兵士四人が二人の脇に立っていた。
「私に用事がございますならば、わざわざ此方に出向かれなくても。私の方から城に参上致しますのに」
跪いたままブラウンの瞳がブルーの瞳を見据えていた。
「久しぶりだな、シルヴァ。先の月祭り以来か」
「パトリック様も御機嫌麗しく、本日はお二人揃って我が屋敷に何の用向きで御座いましょうか」
「国王からの書状を届けに参った。パトリック、例の物を」
「書状、でございますか?」
てっきり取り戻しに来たのだと思っていたシルヴァは、拍子抜けした声を出した。
「すぐに返事を戴きたい」
パトリックは書状を渡しながら、後ろに控えているバトラーを一瞥した。
シルヴァは書状を早速開いて一読すると、立ち上がって書状を仕舞いながらパトリックに微笑んだ。
「承知致しました。後日必ず手配する、とお申し伝え下さい」
口元とは裏腹に、その目は少しも笑っていない。
「用向きはこれだけで御座いますれば、私は人を待たせておりますので、これで失礼致します。あとはバトラーが応対致します」
もう一度跪いて、アランに向かって丁寧に頭を下げると、サッと立ちあがった。
「待て!我々がここに参ったのは、もう一つ用件があるためだ。寧ろ、こちらの方がメインと言った方が、君には分かり易いかな?・・・我々は、人を探しに参った」
パトリックの瞳がブラウンの瞳を射るように見据える。
「・・・恐れながら、私には何のことか分かりません。あなた様のお探しするような高貴な方は、ここには居られません。もしや、何か勘違いをされているのでは御座いませんか?」
ブラウンの瞳が不敵な光を湛え、パトリックを睨み返す。
さすがに生まれながらの貴族なだけあり、パトリックの放つ威厳にも全く怯む様子がない。
「外に、仕立屋の荷車を見かけたが、君が待たせている人と言うのは仕立屋か?察するに、大層な荷物を運んだと見える」
「いえ、仕立屋などではなく―――・・・兎に角あなた様のご期待に沿うようなことは、ここには御座いません。どうか、お引き取りを。バトラー、後を頼む」
踵を返し、扉の取っ手に手をかけるシルヴァ。
扉を開けようとするその手を止めたのは、静かに放たれた威厳のある声。
それには、ここに来てずっと抑えていた殺気をも含んでいた。
「待て。まだ用向きは済んではおらぬ」