シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
場所は変わって城の中。
メイに少しの異変が起きていた。
「あ、もう!メイ、何処に行っていたの?侍女長が探してらしたわよ。アラン様の塔の3階に、急いで来るようにって」
沈んだ瞳を伏せながらメイド部屋に戻ったメイに、焦ったような仲間の声が向けられた。
「え?塔の3階?何の用かしら」赤い目を瞬かせ、仲間のメイドを見つめた。
「知らないわ。ただ、早く行った方がいいわ。随分慌てた様子だったから。遅いと、また叱られちゃうわよ」
塔の3階って。行ったことないけど、3階のどこに行けばいいのかしら。
不安に思いながら階段を急いで上っていくと、人待ち顔の侍女長がイライラと手揉みしながら廊下に立っていた。
「侍女長、すみません。お呼びですか?」
「メイ!やっと来たわね。急いでこちらにいらっしゃい。もう時間がないわ。あ、あの子、あなたの部下になるのよ。えーと名前は・・・何だったかしら・・・あぁもういいわ。挨拶は後でお互いにしてちょうだい。兎に角、今は急がないと」
廊下をいそいそと歩きながら一気に喋ると、奥の手前の白い扉を開けた。
「さぁ、夕方までにこれを片付けて、掃除しておきなさい。メイ、この子にきちんと指示して、時間までに必ず仕上げておくのよ。じゃ頼んだわ」
部屋の中を指差し、早口で指示すると侍女長はいそいそと戻って行った。
「これを、二人で夕方までに?」
残されたメイと新人は、山のように積まれた箱を恨めしげに見つめた。
その頃エミリーは、広間で沢山の布の切れ端を見て悩んでいた。
どれも素敵でどれも欲しくなってしまう。
でも選ぶのは一つだけ、買って貰うドレスは一着だけと決めていた。
今試着しているドレスも素敵で迷うところだが、買って貰うつもりは無い。シルヴァに多くのことをして貰うつもりは無かった。
何かを買ってもらうのもこれを最後に、あとは慎ましくしようと決めている。
今にきっと”月の乙女”だなんて、そんな凄い人ではないと分かる時が来る。
そうなればシルヴァはきっと屋敷から追い出すだろう。
その時、贅沢に慣れてしまっていては、路頭に迷った時困ってしまう。
「これでお願いします」
長く美しい指が指した布は、花の透かし模様の入った奇麗な布と、隣国で作られた淡い色の布だった。これで作ればきっと爽やかなドレスが出来上がる。
「そうですね。それが一番お似合いですわ。きっとシルヴァ様もお喜びになるでしょう」
脇に立っていたリリアが手揉みをしながら嬉しそうに笑った。
「ありがとう、リリアさん。着替えてお茶を頼んできますから、少しお待ちくださいね」
立ち上がろうとすると、店主が慌てて制するように腕を伸ばした。
「あぁ、エミリー様、お待ち下さい。どうか、そのまま―――」
メイに少しの異変が起きていた。
「あ、もう!メイ、何処に行っていたの?侍女長が探してらしたわよ。アラン様の塔の3階に、急いで来るようにって」
沈んだ瞳を伏せながらメイド部屋に戻ったメイに、焦ったような仲間の声が向けられた。
「え?塔の3階?何の用かしら」赤い目を瞬かせ、仲間のメイドを見つめた。
「知らないわ。ただ、早く行った方がいいわ。随分慌てた様子だったから。遅いと、また叱られちゃうわよ」
塔の3階って。行ったことないけど、3階のどこに行けばいいのかしら。
不安に思いながら階段を急いで上っていくと、人待ち顔の侍女長がイライラと手揉みしながら廊下に立っていた。
「侍女長、すみません。お呼びですか?」
「メイ!やっと来たわね。急いでこちらにいらっしゃい。もう時間がないわ。あ、あの子、あなたの部下になるのよ。えーと名前は・・・何だったかしら・・・あぁもういいわ。挨拶は後でお互いにしてちょうだい。兎に角、今は急がないと」
廊下をいそいそと歩きながら一気に喋ると、奥の手前の白い扉を開けた。
「さぁ、夕方までにこれを片付けて、掃除しておきなさい。メイ、この子にきちんと指示して、時間までに必ず仕上げておくのよ。じゃ頼んだわ」
部屋の中を指差し、早口で指示すると侍女長はいそいそと戻って行った。
「これを、二人で夕方までに?」
残されたメイと新人は、山のように積まれた箱を恨めしげに見つめた。
その頃エミリーは、広間で沢山の布の切れ端を見て悩んでいた。
どれも素敵でどれも欲しくなってしまう。
でも選ぶのは一つだけ、買って貰うドレスは一着だけと決めていた。
今試着しているドレスも素敵で迷うところだが、買って貰うつもりは無い。シルヴァに多くのことをして貰うつもりは無かった。
何かを買ってもらうのもこれを最後に、あとは慎ましくしようと決めている。
今にきっと”月の乙女”だなんて、そんな凄い人ではないと分かる時が来る。
そうなればシルヴァはきっと屋敷から追い出すだろう。
その時、贅沢に慣れてしまっていては、路頭に迷った時困ってしまう。
「これでお願いします」
長く美しい指が指した布は、花の透かし模様の入った奇麗な布と、隣国で作られた淡い色の布だった。これで作ればきっと爽やかなドレスが出来上がる。
「そうですね。それが一番お似合いですわ。きっとシルヴァ様もお喜びになるでしょう」
脇に立っていたリリアが手揉みをしながら嬉しそうに笑った。
「ありがとう、リリアさん。着替えてお茶を頼んできますから、少しお待ちくださいね」
立ち上がろうとすると、店主が慌てて制するように腕を伸ばした。
「あぁ、エミリー様、お待ち下さい。どうか、そのまま―――」