シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「店主さん?さっきから様子がおかしいですけど、大丈夫ですか?やっぱり、どこか具合が悪いんじゃ?」
店主の額には汗が滲み、笑顔を作ってはいるが顔色がとても悪い。
「やっぱりわたし、メイドを呼んできます。少し、待っていて下さい」
店主が慌てた様子で再び手を伸ばすが、それに構わずに立ち上がって踵を返した。
―――その時、広間の扉がバッと勢いよく開かれ、ドレスの壁の向こうから二人の警備員が駆けこんで来た。
「そんなに急いで・・・。どうかしたのですか?」
「エミリー様!移動していただきます!この時間になったら、移動して戴くようにと、シルヴァ様に言われております。さぁ、お早く!店主、お前もそれを持って一緒に来い!」
何がそうさせているのか分からないが、目の前の警備員は焦ったような声を出している。
「え・・・移動?」
突然のことに驚いて呆然としていると、「さぁ!お早く!」と警備員の手が伸びてきた。
その刹那、信じられないようなことが目の前で起こった。
伸ばされた警備員の腕が逆に向けられ、素早く捻じられると、目の前の体がうつ伏せのまま床に倒されていく。
後ろ手に捻じった腕を掴んだまま、男が背中の上に乗っていた。
あっという間の出来事に、この部屋に居た誰もが声も出せずにいた。
素早く動いたのは五人の男。
二人は警備員を床に組み伏せ、残りの三人はエミリーの周りを囲むように立っていた。
「離せ!仕立屋の分際で、何をする!?」
「黙れ!」二人の男は警備員の体を縄で素早く縛ると、見張るように脇に立った。
「あ・・・あなたたちは?」
「私たちは、あるお方からあなた様を守るよう申しつけられております。どうぞお座り下さい。私がメイドを呼んで参ります。少々お待ちを」
脇に居た男が丁寧に頭を下げると、部屋から素早く出ていった。
男は廊下で窓を拭いている赤毛のメイドを見つけ、声をかけた。
「シルヴァ様はどちらに居られますか」
「この廊下を真っ直ぐ、突き当たりの手前の部屋に居られます。私が呼んで参りましょうか?」
「いいえ、有難う。あ、仕立屋の店主が具合が悪そうだと、心配しておいででした。あなたは広間にお茶をお持ちして下さい。エミリー様がご所望です」
男はにこやかに微笑み、メイドに軽く挨拶をして廊下の先に急いだ。
教えてもらった部屋の扉を開けると、途端に漏れ来る冷たくピリピリとした空気。男は堪らずに声を漏らし、瞳を瞬かせた。
今までほんわりとしたあたたかいオーラの傍にいたせいか、部屋の奥から放たれるそれはことのほか堪える。
いつもより気を張らないと、体が萎縮して動かなくなってしまう。
ぐっと気を張り、居住まいを正して丁寧に頭を下げた。
「アラン様、ラウルに御座います」
店主の額には汗が滲み、笑顔を作ってはいるが顔色がとても悪い。
「やっぱりわたし、メイドを呼んできます。少し、待っていて下さい」
店主が慌てた様子で再び手を伸ばすが、それに構わずに立ち上がって踵を返した。
―――その時、広間の扉がバッと勢いよく開かれ、ドレスの壁の向こうから二人の警備員が駆けこんで来た。
「そんなに急いで・・・。どうかしたのですか?」
「エミリー様!移動していただきます!この時間になったら、移動して戴くようにと、シルヴァ様に言われております。さぁ、お早く!店主、お前もそれを持って一緒に来い!」
何がそうさせているのか分からないが、目の前の警備員は焦ったような声を出している。
「え・・・移動?」
突然のことに驚いて呆然としていると、「さぁ!お早く!」と警備員の手が伸びてきた。
その刹那、信じられないようなことが目の前で起こった。
伸ばされた警備員の腕が逆に向けられ、素早く捻じられると、目の前の体がうつ伏せのまま床に倒されていく。
後ろ手に捻じった腕を掴んだまま、男が背中の上に乗っていた。
あっという間の出来事に、この部屋に居た誰もが声も出せずにいた。
素早く動いたのは五人の男。
二人は警備員を床に組み伏せ、残りの三人はエミリーの周りを囲むように立っていた。
「離せ!仕立屋の分際で、何をする!?」
「黙れ!」二人の男は警備員の体を縄で素早く縛ると、見張るように脇に立った。
「あ・・・あなたたちは?」
「私たちは、あるお方からあなた様を守るよう申しつけられております。どうぞお座り下さい。私がメイドを呼んで参ります。少々お待ちを」
脇に居た男が丁寧に頭を下げると、部屋から素早く出ていった。
男は廊下で窓を拭いている赤毛のメイドを見つけ、声をかけた。
「シルヴァ様はどちらに居られますか」
「この廊下を真っ直ぐ、突き当たりの手前の部屋に居られます。私が呼んで参りましょうか?」
「いいえ、有難う。あ、仕立屋の店主が具合が悪そうだと、心配しておいででした。あなたは広間にお茶をお持ちして下さい。エミリー様がご所望です」
男はにこやかに微笑み、メイドに軽く挨拶をして廊下の先に急いだ。
教えてもらった部屋の扉を開けると、途端に漏れ来る冷たくピリピリとした空気。男は堪らずに声を漏らし、瞳を瞬かせた。
今までほんわりとしたあたたかいオーラの傍にいたせいか、部屋の奥から放たれるそれはことのほか堪える。
いつもより気を張らないと、体が萎縮して動かなくなってしまう。
ぐっと気を張り、居住まいを正して丁寧に頭を下げた。
「アラン様、ラウルに御座います」