シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
指先が触れたその刹那を、逃さないように素早く動いた武骨な手は、か細い指を掌の中にそっと収めた。
その愛しい手の感触に、ブルーの瞳がフッと緩む。
ずっと衣のように纏っていた冷たい殺気は、この数日間何をしていても頭から離れることのなかった、ずっと焦がれていた姿を瞳に映した瞬間に、すーっと消えてしまった。
目の前の華奢な身体を立ち上がるように優しく促すと、ソファから離れた場所に誘導した。
そして、正面に向き直りブルーの瞳を真摯な色に染め、ふわりと床に跪いた。
そして胸に手を当てて頭を下げると、アメジストの瞳を見つめ、朗々と言葉を紡いだ。
「愛しい我が主、我はこの通り迎えに参った。我の忠義の印を示して帰城のお願いを申す。我の忠義の印は、これに―――」
そのまま恭しく手を取り、か細い指先にそっと唇を落とした。
流麗な所作に広間に居た誰もが息を飲み、見惚れている。
「ぁ・・・・アラン様・・・?」
目の前で起こった出来事が信じられない。
か細い指があたふたと再び辺りを彷徨い、青ざめていた頬がほんのり染まっていく。
行き場を探すか細い指を、大きな掌がすっぽりと包み込んだ。
「遅くなってすまない。君を迎えに参った」
ブルーの瞳が愛しげに見つめている。
しかし、俯いたアメジストの瞳は、腕に嵌められたリングを哀しげに見つめていた。ピンクに染まっていた頬は、もう青ざめている。
―――このリング。これがある限り帰ることが出来ない。
それに、わたしがここから離れればメイが酷い目に合ってしまう・・・。
「こんなわたしを迎えにだなんて、とても嬉しいです。でも、わたし帰りません・・・帰れないのです。リングを、シルヴァに・・・腕に嵌めておりますから・・・それに、わたしは―――」
―――首筋に紅い印を。
そのことは、誰よりも知られたくない。他の誰よりも見られたくない。
わたしはもう―――
アメジストの瞳から涙の雫が頬を伝って、ポロポロと溢れ落ちる。
想いに気付いてしまった今は、もう、前のようにお傍にいられない。
こんな印があるわたしは、アラン様の迎えの手を取る資格なんてない―――
呟くように出された声は消え入りそうに細く、アランの庇護欲を掻き立てていく。
「何を申す。リングは私が外す。君は大人しく私の申す通りにすれば良い。城に帰るぞ?」
頬を伝う雫をそっと拭いながら、静かに語りかけた。
―――この手。あったかくて大きくて、心までも包み込まれてしまう。
このまま・・・このまま何も気にせずに帰ることができたら、どんなにいいか・・・。
この手が優しい程に辛くなる。首の印が焼けるように主張する。
“お前はシルヴァのものだ。ここで暮らせ”と。
その愛しい手の感触に、ブルーの瞳がフッと緩む。
ずっと衣のように纏っていた冷たい殺気は、この数日間何をしていても頭から離れることのなかった、ずっと焦がれていた姿を瞳に映した瞬間に、すーっと消えてしまった。
目の前の華奢な身体を立ち上がるように優しく促すと、ソファから離れた場所に誘導した。
そして、正面に向き直りブルーの瞳を真摯な色に染め、ふわりと床に跪いた。
そして胸に手を当てて頭を下げると、アメジストの瞳を見つめ、朗々と言葉を紡いだ。
「愛しい我が主、我はこの通り迎えに参った。我の忠義の印を示して帰城のお願いを申す。我の忠義の印は、これに―――」
そのまま恭しく手を取り、か細い指先にそっと唇を落とした。
流麗な所作に広間に居た誰もが息を飲み、見惚れている。
「ぁ・・・・アラン様・・・?」
目の前で起こった出来事が信じられない。
か細い指があたふたと再び辺りを彷徨い、青ざめていた頬がほんのり染まっていく。
行き場を探すか細い指を、大きな掌がすっぽりと包み込んだ。
「遅くなってすまない。君を迎えに参った」
ブルーの瞳が愛しげに見つめている。
しかし、俯いたアメジストの瞳は、腕に嵌められたリングを哀しげに見つめていた。ピンクに染まっていた頬は、もう青ざめている。
―――このリング。これがある限り帰ることが出来ない。
それに、わたしがここから離れればメイが酷い目に合ってしまう・・・。
「こんなわたしを迎えにだなんて、とても嬉しいです。でも、わたし帰りません・・・帰れないのです。リングを、シルヴァに・・・腕に嵌めておりますから・・・それに、わたしは―――」
―――首筋に紅い印を。
そのことは、誰よりも知られたくない。他の誰よりも見られたくない。
わたしはもう―――
アメジストの瞳から涙の雫が頬を伝って、ポロポロと溢れ落ちる。
想いに気付いてしまった今は、もう、前のようにお傍にいられない。
こんな印があるわたしは、アラン様の迎えの手を取る資格なんてない―――
呟くように出された声は消え入りそうに細く、アランの庇護欲を掻き立てていく。
「何を申す。リングは私が外す。君は大人しく私の申す通りにすれば良い。城に帰るぞ?」
頬を伝う雫をそっと拭いながら、静かに語りかけた。
―――この手。あったかくて大きくて、心までも包み込まれてしまう。
このまま・・・このまま何も気にせずに帰ることができたら、どんなにいいか・・・。
この手が優しい程に辛くなる。首の印が焼けるように主張する。
“お前はシルヴァのものだ。ここで暮らせ”と。