シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
リングを見つめ、もう一度広間の中を見渡した。
さっきまで気付かなかったが、シルヴァが隅の方で座り込んでいるのが見える。
目の前のブルーの瞳には自分の姿だけが映っていて、
見つめる光りはとても優しげで・・・何もかも許してくれるような・・・
「わたしは城に・・・皆さんの元に戻りたいです。連れて行ってもらえますか?―――っ!・・・アラン様?」
言い終わるか終わらないかの内に身体を襲った浮遊感に、テラスでの出来事が思い出された。あの時もこんな風に突然・・・。
もしかして、主って、あのときのテラスでの―――
立ち上がるついでのように軽々と抱き上げられた身体は、以前よりもずっと軽くなっていた。アランの眉が苦しげに寄せられる。
「無論だ。すぐに連れ帰る。やはりここに残ると申しても、もう駄目だ。ラウル」
「はいアラン様」隅の方に居たラウルが素早く走り寄ってきた。
「仕立屋の手伝いは最後まできちんとせよ。それから彼女が注文したドレスは、私が買い受ける。そのように店主に申し伝えよ」
・・ソファに座る店主。その表情はいつもの営業用の貼りつけたような笑顔ではなく、ほんわりとした丸い笑顔を浮かべていた。
どこか幸せそうにも見えるその笑顔は、リリアも古株のマックでも初めて見るものだった。珍しい物を見るように店主の表情を見つめている。
アランは広間の中をぐるっと見回して踵を返すと、すたすたと進み、項垂れるように座り込むシルヴァの前で止まった。
「シルヴァ・サルマン。君の屋敷に迷い込んだ我が主の手厚い保護、まことに感謝致す。君が私に渡すべき物は、パトリックに託すが良い」
これを留めとビリっとした威厳を放ち、足早に広間を後にした。
馬車に戻るまでの間にリールと赤毛のメイドそれに警備員が3人、エミリーを抱えるアランを見ると後を追うように付いてきた。
外には庭にまわっていた兵が待っていて、笑顔で次々にエミリーに頭を下げた。
「皆君を守りに来た者だ」
その中で一人、リールが進み出て、どこか申し訳なさそうな笑顔を浮かべた。
「エミリー様、申し訳御座いませんでした。守りの目が届かぬことも御座いました。お許し下さい」
「リール。そのことについては、後程城で申し開きを聞く。今は急ぎ城に戻るのが、先決だ」
一刻も早く馬車に乗せて城に帰らないと、腕の中の身体はとても軽く、今にも羽が生えて消えてしまいそうで不安になる。
馬車に乗り込み、そうっとふんわりとした椅子に座らせると、腕の中から身体がするりと零れ落ちた。
何か思い出したように小声で呟いている。
ブロンドの髪をふわふわと揺らし、あろうことか、馬車を降りようとしていた。
「待て!エミリー何処へ行く!?」
さっきまで気付かなかったが、シルヴァが隅の方で座り込んでいるのが見える。
目の前のブルーの瞳には自分の姿だけが映っていて、
見つめる光りはとても優しげで・・・何もかも許してくれるような・・・
「わたしは城に・・・皆さんの元に戻りたいです。連れて行ってもらえますか?―――っ!・・・アラン様?」
言い終わるか終わらないかの内に身体を襲った浮遊感に、テラスでの出来事が思い出された。あの時もこんな風に突然・・・。
もしかして、主って、あのときのテラスでの―――
立ち上がるついでのように軽々と抱き上げられた身体は、以前よりもずっと軽くなっていた。アランの眉が苦しげに寄せられる。
「無論だ。すぐに連れ帰る。やはりここに残ると申しても、もう駄目だ。ラウル」
「はいアラン様」隅の方に居たラウルが素早く走り寄ってきた。
「仕立屋の手伝いは最後まできちんとせよ。それから彼女が注文したドレスは、私が買い受ける。そのように店主に申し伝えよ」
・・ソファに座る店主。その表情はいつもの営業用の貼りつけたような笑顔ではなく、ほんわりとした丸い笑顔を浮かべていた。
どこか幸せそうにも見えるその笑顔は、リリアも古株のマックでも初めて見るものだった。珍しい物を見るように店主の表情を見つめている。
アランは広間の中をぐるっと見回して踵を返すと、すたすたと進み、項垂れるように座り込むシルヴァの前で止まった。
「シルヴァ・サルマン。君の屋敷に迷い込んだ我が主の手厚い保護、まことに感謝致す。君が私に渡すべき物は、パトリックに託すが良い」
これを留めとビリっとした威厳を放ち、足早に広間を後にした。
馬車に戻るまでの間にリールと赤毛のメイドそれに警備員が3人、エミリーを抱えるアランを見ると後を追うように付いてきた。
外には庭にまわっていた兵が待っていて、笑顔で次々にエミリーに頭を下げた。
「皆君を守りに来た者だ」
その中で一人、リールが進み出て、どこか申し訳なさそうな笑顔を浮かべた。
「エミリー様、申し訳御座いませんでした。守りの目が届かぬことも御座いました。お許し下さい」
「リール。そのことについては、後程城で申し開きを聞く。今は急ぎ城に戻るのが、先決だ」
一刻も早く馬車に乗せて城に帰らないと、腕の中の身体はとても軽く、今にも羽が生えて消えてしまいそうで不安になる。
馬車に乗り込み、そうっとふんわりとした椅子に座らせると、腕の中から身体がするりと零れ落ちた。
何か思い出したように小声で呟いている。
ブロンドの髪をふわふわと揺らし、あろうことか、馬車を降りようとしていた。
「待て!エミリー何処へ行く!?」