シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「案ずるな、暗かった故、そう見てはおらぬ」

握られていた手が丁寧に膝の上に戻され、俯いていた顔をくいっと上に向けられた。

アメジストの瞳に映るのは、怖いほどに真剣な瞳・・・。


「私がどんなに君を大切にしておるか、分かるか?どんなに抑えておるか分かるか?」


掌が頬を優しく覆って固定された。ブルーの瞳に映るのは、戸惑っている自分の顔。


――アラン様がわたしを想ってるの?妹ではなかったの?


「こんなに触れたいと思うのも、こんなに欲しいと思うのもエミリー、君だけだ。他の誰でもない」


ふわふわの髪を一束すくっては、指の間からサラサラと零した。


「今までは君の気持ちを優先しすぎた。少し遠慮しすぎていたようだ。私はパトリックのように女性に慣れておらぬ。君に嫌われるのが怖かった」


そう言うと、ベッドから離れ壁に向かって歩いていく。

一つだけ灯していた壁の燭台に手を近付けて、カチッと音をさせた。灯りが小さくなり、部屋の中は暗くなってベッドまで光りが僅かに届くのみになった。



「今より、私の気持ちを優先させる。だがその前に、一つ確かめねばならぬことがある」



逆光に揺れるアラン様の銀色の髪、とても綺麗。ドキドキする。

今から何をされるのか分かってるけれど、正直とても怖い・・・。

何をされてもいいと思っていたけれど、いざとなると緊張する。

でも、逃げたくない。だって、好きだから・・・。

妃にはなれないけれど、寵愛は受けてもいいのよね?


「先程君が申したことは本当か?」


「あ・・・先程っていうのは・・・つまり、あの――――」



「私のことが好きか?」



「はい・・・わたしは、アラ――ん・・・」


アラン様の唇が、言葉を紡いでいたわたしの唇をそっと塞いだ。

頬から後頭部に移された掌が優しく頭を支え、背中にまわされた手が優しく身体を支え、いつの間にかベッドの上に横たわっていた。


武骨な指がか細い指を絡め取り、ぎゅっと握った。



甘く優しく強く、全てを絡め取るようなキス。




――わたし、今、アラン様にキスされてる。



これって本当なの?


夢じゃないのね?


甘くて優しくて・・・身体の奥が熱い。




息もできないほどに、何度も何度も絡め取られて、唇が離れされた時には気が遠くなっていた。



「エミリー・・・?」



アラン様が呼んでる・・・。


目の前の頬に手を伸ばした。



アラン様、わたし、変なの・・・身体がふわふわ・・する・・の。



意識がふっつりと切れ、闇に落ちていった。
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