シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「エミリー・・・大丈夫か?」

頬に当たる少し堅いけれど優しい手の感触。

アラン様の声・・・なんだか少し心配そうに聞こえるのは気のせい?



「ん・・・アラン様・・・?ここ・・どこ・・・?」


ぼんやりと映るのは何の飾りもないシンプルな天蓋。


―――シャクジの花の絵がないわ・・・。

ウソでしょう?またわたし、知らないところに来てしまったの―――?


「エミリー大丈夫か?突然気を失った。フランクを呼ぶか?」


心配そうなブルーの瞳が覗き込んでる。腕枕されてるけど、これは夢の続きを見ているの?


「アラン様・・・?」


――ここは、アラン様の寝室?

ぇっ・・と・・そういえばさっきまでわたし、アラン様にキスをされてて。

そうしたら、なんだか身体がふわふわして・・・

わたし、あの後意識を失ったの?恥ずかしい―――


頬がすぅっと熱くなっていく。慌てて両手で頬を隠した。


「・・・大丈夫です」


「本当か?心配でならぬ・・・。やはりフランクを呼ぶ。待っておれ」


素早く動く体を捕まえようと、伸ばした指が空を掴んだ。アランは既に壁の燭台に辿り着き、カチッと音をさせて灯りを強くしていた。


「アラン様、待って」


ふわりとベッドから降りてアランの元に走り寄った。扉を開いて、今にも警備兵を呼びそうなアランの服を掴んで、何とか引き止めた。


「嫌、待って。行かないで。やめてください。お願い、呼ばないで・・・」



「本当に、平気なのか?」



様子を確認するように頬に手を当てるアラン。エミリーの頬はまだ薔薇色に染まったまま。アメジストの瞳はきらきらと輝いていて、なんとも美しい。

少し開いただけの扉に反応し、警備兵が既に走り寄ってきていた。



「アラン様、何か御用でしょうか」




「このとおり、平気ですから。心配かけてごめんなさい」


「いや、何でもない。戻って良い」


恥ずかしげに微笑みを浮かべるエミリーの表情に安心し、大きな掌を扉の外に差し出して制すると、警備兵は頭を下げてサッと下がっていった。



「分かった。もうフランクは呼ばぬ。大丈夫なら続きをしても良いか?」


ブルーの瞳が優しく輝き、柔らかく微笑みながら見下ろしている。



「もう、平気なのであろう?」


「平気です・・・でも、続きって、あの―――」


簡単にふわりと浮いた身体が、すたすたとベッドまで運ばれていく。


「案ずるな。無理はさせぬ」
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