シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「エミリーさん、見てください。ほら、小鳥もすっかり怪我が治りました。あとは外に返すだけです」

フランクは籠の中で蹲って眠る小鳥を指差した。


「フランクさん本当?嬉しいわ。もう、外に放しても良いのね?」


嬉しそうに話すエミリーの声に反応して、小鳥がピクッと身動ぎをして起きた。

つぶらな瞳がキラキラと輝き、医務室の中に歌うような囀りが響き渡った。

まるでお礼の歌でも歌っているかのよう。

医務室にいる全ての者が、きれいな囀りにうっとりと聞き入った。



「このコも嬉しいのね」


「私も嬉しいですよ。もう、あなたのために餌を用意しなくてすみますから・・・もう、あなたを、待たなくてすみますからね」



相変わらずぶっきらぼうな物言いで、部屋の隅の方でリードが呟いていた。

エミリーは傍まで走り寄っていき、にっこりと微笑んだ。

その背後で、護衛がリードを威圧するように睨んでいる。



「リードさん。ありがとうございました。あなたのお陰でわたし、このコの世話ができたの。毎日餌を準備してくれたこと、このコの世話をしてくれたこと、本当に感謝しているわ」


「またあなたはっ・・・。どうしてそうすぐに近寄るんですか。ほら、あなたの護衛が睨むんですよ――――」


「ごめんなさい。シリウスさん、この方は大丈夫よ?」


「・・・鳥の世話など・・・別に、あなたの為にした訳ではありませんから。そんな風に言われても、嬉しくありません」



エミリーは毎日医務室に訪れたお陰で、リードの物言いにすっかり慣れていた。

こういう言い方をしていても、何を言いたいのか分かる。



「そうだわ。リードさん、一緒にこのコを放しに行きましょう。フランクさん、少しの間なら良いでしょう?」


エミリーの突然の提案に、護衛の顔がピクッと引き攣った。

リードの顔も、それ以上に引き攣っている。

フランクは眼鏡をキラッと光らせてニッコリと笑った。



「い・・・一緒に鳥を放しに?」

「いいですよ。リード、行ってらっしゃい」

「いや・・・・しかし、私は、業務があって・・・」


フランクは戸惑ってオロオロしているリードの腕を掴み、悪戯っぽい笑顔を浮かべながら、内緒の声で言った。


「いいのですか?リード。明日はもう、エミリーさんは来られませんよ?」

「ふっ・・フランクさん、一体何を―――」


フランクは意味ありげな様子で、にこにこと笑ってリードを見ている。



――分かっている。あの方は王子様の大切な方。

普通なら、私など声もかけて貰えないようなお方・・・これが、最後―――



「そんなに一緒に行きたいのなら、行ってあげてもいいですよ」


「本当?じゃ、行きましょう。シリウスさん、いいでしょう?」


護衛はリードを睨みながら、複雑な表情で頷いた。
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