シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
突然のことに驚いて、身体がびくっと震えた。

そのせいで、手に持っていた籠を落としそうになって、あたふたと抱え直した。

籠の中からバタバタと羽ばたく音が聞こえる。


――小鳥さん、無事かしら・・・。


恐る恐るそっと確認すると、籠の中で羽ばたいてはいたものの、元気な様子で、つぶらな瞳が今朝と変わらずにキラキラとしていた。


「良かった・・・」


ほっと胸を撫で下ろして振り返ると、正装をしたアランが眉を寄せて立っていた。


「エミリー、庭の散策は許すと申したが、あの森はダメだ。危険すぎる」

「アラン様、違うの。入り口からこのコを森に放したいだけなの」

「鳥を放すのか。しかし入口とはいえ、あの森は危険だ。心配でならぬ。あそこは名も分からぬ珍獣が沢山居るゆえ」


「ダメなのですか?ほんの少しだけなの・・・良いでしょう?お願い」


「私も一緒に行ければ良いが、今から客を迎えねばならぬ―――仕方あるまい。シリウス、ラウルを呼んで参れ。エミリー、暫し待て」


言いながらアランは懐中時計を取り出した。

難しい顔して何かぶつぶつ言っている。


「全く・・・君には、困ったものだ・・・どうしてこう心配をかけるのか」


そんなやり取りの中、リードはアランの威厳のあるオーラから逃れるように、かなり離れたところに立っていた。

アランの威厳に当てられ、近くにいるだけで足がガクガク震えてしまう。

彼女はあんなオーラの近くにいて、何故あんなに平気なんだ?

リードは不思議そうな顔でエミリーを見ていた。



「彼はフランクの助手だな。何故、彼と一緒に行く?」


「リードさんは、毎日このコの餌を準備してくれたの。長い生き物が苦手なわたしのために、いつも小さくしてくれていたわ。だからわたしはこのコのお世話が出来たし、このコも元気になれたの。だから一緒にお祝いして欲しくて、わたしが無理を言って頼んだの」


「そうか。君は人を巻き込むのが得意だな」


眉を寄せていたアランの表情が、すーっと柔らかくなっていく。


「そんな・・巻き込むだなんてひどいわ、アラン様。わたしはただ一緒に・・・」

「分かっておる」


「アラン様、ラウルに御座います」


「ラウル、彼女がシャクジの森に行く。入口ではあるが危険な故、シリウスと供に護衛せよ。彼のことも頼む。今はリックも森の中で、小屋にはおらぬゆえ。良いな」



「エミリー、気をつけて行って参れ」


頬をそっと撫でて、腰を包んでいた腕を名残惜しげに離した。
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