赤い狼 四
土下座したまま、苦笑いを浮かべる。
…想像しなかったら良かった………。
後悔しても、もう遅い。
あまりにも惨めな光景に耐えられなくなって顔を上げようとしたその時だった。
「稚春さぁ。」
今までずっと黙っていた恐ろしい方がやけに低い声で喋りだした。
明らかにいつもの声と違うその声に私の肩は思わず、ビクッと揺れる。
「ご、ごめんなさい。棗…。」
私はまた、上げようとした頭を床に擦り付けて棗に謝る。
そう、今私が恐れているのは怒ったら怖い棗。
《SINE》の裏番長でもある副総長の棗様。
「いや、別にそこまで謝らなくてもぃぃんだけどさ。」
さっきより声のトーンが高くなった棗に、ゴクリと唾を呑み込む。
これは………イケるかもしれない。
このまま反省してますアピールをしていたらきっとなんだかんだ言って優しい棗なら許してくれるだろうと思った私は、
今の棗がどんな表情をしているのか見たくて今度こそ、顔を上げた――――のはぃぃのだけれど。
「な…つめ。どうしたの、その傷………。」
棗の頬についている傷と血を見て思考が停止した。