赤い狼 四
――パシッ!――
しまった、って思った。
でももう、気付いた時には遅くて。
固まった隼人。
払われた手。
見開く目。
それは、隼人が私の額に隼人の額をくっ付けようとしたのを私が払ったという事を表していて。
「稚春…?」
戸惑う隼人の声に、酷く自分が醜く感じた。
―――あぁ、今の私じゃ隼人に普通に接せられない。
何故だか隼人と目が合わせられなくなって隼人から目を逸らす。
駄目だ、私。まともに隼人と喋れない。
近くに居れられない。
もやもや、もやもやと私の心を真っ黒な雲が覆いつくす。
――――逃げたい。
「…私っ、帰る!」
「おい、どうした!?今日のお前変だぞ!?」
「具合悪いの!離して!帰る!!!」
私の腕を掴んでくる隼人の手を振りほどこうとしたけどできない。
何でそんなに私に構うの。もういいじゃん。私なんか必要ないじゃん!
もう放っておいて、と隼人に言おうとした瞬間―――
「離せるわけねぇだろ!!」
ダンッと大きな音がしたと同時に視界がぐらりと揺れた。