赤い狼 四
妃菜ちゃんは、一言で言えばとても美形な奴だった。
可愛い、というよりは綺麗な方で。
そんな妃菜ちゃんを《SINE》の奴等は頬を赤らめながら見ていた。
《SINE》の奴等には綺麗すぎて声を掛けるのが精一杯だったんだろう。
「おはようございます!」
と元気な挨拶をしては妃菜ちゃんから返されるあの、透き通るような声の
「おはよう。」
を聞いて、顔を真っ赤にさせていた《SINE》の奴等。
それを見て俺は毎日爆笑してたっけなあ。
まぁ、視線をさ迷わせながら喋る連も笑えたが。
…でも、妃菜ちゃんが《SINE》の奴等と仲良く話とかしてたのは見なかったな。
まぁ、自分が話し掛けたらしょっちゅう相手はどもるわ、鼻血出すわ、真っ赤になって黙るわ、が続けば話そうとは思わねぇよな。
でも、それは何度も言うが《SINE》の奴等にとって妃菜ちゃんが美しすぎただけで、嫌いだった訳じゃねぇ。
むしろ、好きだった。
俺も含めて、全員。
だからこそ、悲しかったんだ。
だからこそ、苦しかったんだ。
何で、とすぐ隣で奏が呟く。
その声は小さくて震えていたけど、しっかりと妃菜ちゃんに届いた。