赤い狼 四
それがやけに気になって、周りを一回見渡す。
「なんか最近、弱虫だなぁ。」
眉を垂らしながら小さく呟く。
きっと今、鏡を見たら情けない顔をしているんだろう。
どこかのお姫様が着るんじゃないかっていうくらい乙女なウエディングドレスに身を包んで、ファスナーを自分でできる範囲まで上げる。
この部屋にある全身鏡に映った自分は違う人のような気がした。
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「や、もうさ。結婚して欲しかったよね。」
「せやろ~、要~。たまらんかったわ~!」
「龍、変態…。」
「鳳陽いちいち煩いねん!」
立ち上る湯気の中、全身にタオルを巻いた私は息を呑んで片隅に踞っている。
なななな何でこんな事に!
暑いからなのか焦っているからなのか、もうどっちなのか分からない汗を顎まで伝わらせながら壁を見る。
「で、優悪。お前はどう思ったんだよ。」
「どうって何がだよ、兄貴。」
「稚春のドレス姿に決まってんだろーが。」
その間にも私の背中越しに聞こえてくる楽しげな会話。
その会話と一緒に耳に入ってくる水の音に現実だ、と知らされている気がした。