赤い狼 四
「はいはい、過激な愛情表現はそのくらいにしてね。」
「うぉわっ!離せよ棗!」
スリスリと私の頭に連の頬を擦り付けてくる状態に少しだけ困っていると
棗が連の首の襟辺りを掴んで私からベリッと剥がすように離した。
それによって連の抱き締め攻撃から解放された私の体はさっきまでの息苦しさが嘘のように感じられた。
ふと棗と連を見ると、まだ言い合いをしていて。
「俺は稚春と一緒に居たいんだ!」
「今でも一緒だろ。一緒に居たいんだったら稚春の苦しさも少しは考えてやれ。」
棗に首根っこを掴まれたまま、バタバタと抵抗する連を見て
なんかお風呂を嫌がる猫みたいだな…。
と思わず頬を綻ばす。
なんか私、愛されてるなぁ…。って、自意識過剰も程があるか。
自分の自意識さに少し呆れていると大人しくなった連の襟から手を離した棗に
「稚春、こっちおいで。」
と優しく微笑まれながら手招きをされて走って近寄る。
「なぁに?」
「チョットごめんね。」
棗は少しだけ眉を下げて申し訳なさそうに呟いた後、急に顔を近付けてきた。