Tokyo Midnight
気がつけば、彩斗さんのマンションに引っ越して1ヶ月が経っていた。

特に仕事をする必要もなく、私はただ家事をするだけ。

暇だから私がやるってお手伝いさんを断ったとき、彩斗さんは嬉しそうに笑ってくれた。

「うまい飯、頼むな」

ぽんぽんと頭を撫でてくれる手は大きくてあったかくて、もうそれだけで幸せだった。

でもまだ彩斗さんのご両親には会わせてもらってない。



いつ、会わせてもらえるのかな・・・


そう思いながらも、本当に私でいいのか、少し不安だった。

普通の家庭に生まれ、普通に短大を出て、就職先はキャバクラ。

特技なんて何もない。

私は彩斗さんに内緒でお手伝いさんにお願いして、テーブルマナーや彩斗さんの役に立てそうなことを教えてもらっていた。

おかげで最近は着物も自分で着付けられるようになった。

それでも過去の経歴は取り消せない。
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