貴方の愛に捕らわれて
「そういう訳にはいきません。
今の状況からして、素性の知れない者を組長のそばに置く訳にはいきません。」
猛さんの横をすり抜け、男は強引に私の顎をとらえ顔を上向かせた。
男の言葉には私を蔑む響きがあり、その視線は冷たい。
私は、まるでヘビに睨まれたカエルのように立ちすくんだ。
「商売女という訳ではないようですが…」
男のその一言に、私の心臓は冷水を浴びせられたようにギュッと痛みを上げた。
猛さんが何か叫んでいるようだったが、何を言っているのか聞き取る余裕など無かった。
渾身の力で男の手を振り払い、私はその場から逃げだした。