貴方の愛に捕らわれて

もの言いたげに薄く開かれた桜色の唇。



その魅惑的な唇を貪りたい衝動に駆られ、逃がさないようにそっと頬に手を添える。




だが、香織が初めて龍二に会った時の事を思い出した俺は、ギリギリのどころでその衝動をねじ伏せた。



香織に怯えられたら立ち直れねぇ。



行き場を無くした欲情を、なけなしの理性で押し止めて無理やり額に口付けた。



この俺がデコチューってどうなんだよ………。



中坊みたいな俺の行動に、龍二や智也も驚愕の表情を浮かべている。



内心で舌打ちしつつ柔らかな頬から手を離して、真っ赤な顔で足元の覚束ない香織を抱き上げる。



大人しく腕の中に収まると、俺の肩に顔をうずめる香織。



香織の仕草に、先程の自分の選択が間違いでなかったと安堵する。



俺の愛しい小鳥は、不幸な生い立ちのせいで、心にとてつもなく大きな傷を負っている。



その傷を癒やしてやる為にも、慎重に焦らず少しずつ慣らして行かなければと決意を新たにした。



 

< 162 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop