貴方の愛に捕らわれて
まずは、出来るだけ優しい声で彼女に話し掛けた。
「お前、名前は?」
『香織、篠宮香織です。あの、あなたは……?』
意外にも、香織は俺の事を知らないようだ。
俺が名前を告げても香織の態度に変化はなかった。
それから香織は、少しずつ自分のことを話してくれた。
俺の事を知らない香織。
俺は自分の素性を知られないよう、注意しながら自分の事を語った。
年を聞けば、驚いた事に16才だと言う。
地味な容姿と落ち着いた雰囲気から、20才ぐらいだと思っていた。
幼さの残った顔立ちに納得がいった。
年を知れば、今度は何故こんな時間に毎日現れるのか疑問が湧く。
香織は夜遊びをするような女には見えない。
なぜ毎日こんな時間に現れるのか?
非難がましくならないよう注意して聞けば、アルバイトの帰りだと言う。
こんな時間に女子高生が出来るバイトといえば、水商売か?
しかし、香織と水商売はどうしても結びつかない。
余りしつこく詮索しては警戒されると、俺は納得した振りをして話題を変えた。