貴方の愛に捕らわれて
 

その癖、たまたま手土産にと貰ったケーキを持ち帰った時には、はにかみながらも嬉しそうに小さな箱を受け取る。



直ぐにでも食べたそうな様子だったが、食の細い香織に夕食をきちんと食べてからだと言えば、眉尻を下げてシュンとする姿には、思わず苦笑が漏れた。



最近では、余りからかい過ぎるとふいと視線を逸らせて、むくれるような素振りを見せるようにもなったし、名前を呼べばうっすらと頬を染めて、僅かに微笑むようにもなった。



だがそれは俺と2人っきりの時だけで、人目のある場所では相変わらずの無表情だったが。



ところが、突然現れた俺を見て、驚きの表情を浮かべたかと思えば、次の瞬間、嬉しそうに顔を輝かせたのには、こっちが驚かされた。



いつにない香織の反応に、思わず胸の中に閉じ込めしまったのだが。



「…う、そ……」



誰もが息を呑んで静まり返る中、不意に女が驚きの声をもらした。



 
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