貴方の愛に捕らわれて
目を思いっきり見開いてこちらを凝視する厳つい集団。
その表情は、さながら仁王像。
間近にみる仁王像の集団は想像を絶する迫力で、堪えきれずに青ざめた顔を俯ける。
すると、腰にまわされた腕に僅かだか力がこもる。
その温もりは大丈夫だと言ってくれているようで、私に勇気を与えてくれた。
私は落としていた視線を正面に向けると、ゆっくりと息を吸い込み、口を開いた。
『篠宮香織で――』
「チッ。何で篠宮なんだ。お前はもう郷田だろ」
私の声をかき消すほど盛大な舌打ちがして、低音ボイスが言い放つ。
郷田香織。そうだった。昨日婚姻届にサインしたんだ。
猛さんをチラリと窺えば、不機嫌に眉を寄せて「やり直し」と言わんばかりに、顎をしゃくられる。
『えっと…ご、郷田香織…です。よろしくお願いします』
辿々(たどたど)しく言い直した私に、猛さんは満足げな微笑みを浮かべた。