貴方の愛に捕らわれて
 

ぎゅっと背後から包み込まれるように両腕を拘束され、背中に押し付けられた固い胸板に、ドクリと心臓が跳ねる。



恐怖で身じろぎ一つ出来ないでいると、何よりも安心できるスパイシーな香りが鼻空を擽り、



「楽しかったか?」


優しく耳元で囁かれる低音ボイスに、全身から力が抜けた。


胸の前で交差する逞しい腕にしがみつきながら『はい』と満面の笑みで身を捩れば、そこには愛しい人が。



びっくりして固まる由香里に、また月曜日にねと言って別れを告げ、猛さんに促されるまま車に乗った。



そのまま猛さんに連れて行かれたのは、如何にも《一見様お断り》といった風情の料亭。



私みたいな子供が、しかもこんな格好では入れないようなお店なのに、猛さんは私が気後れするのをちゃんと分かってくれていて、他のお客様と顔を合わすことのない離れの個室を予約してくれていた。



だから緊張することなく、目にも鮮やかでとても美味しい会席料理を、存分に楽しむことが出来た。



 

< 396 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop