貴方の愛に捕らわれて
ここは今夜の会場になる部屋だ。昼頃には既に部屋は整えられていた筈だが、床の間の花にまで気が回らなかったようだ。
舌打ちしそうになるのをこらえて龍二を見れば、龍二も渋い顔で佐武を呼ぶ。
龍二から指摘を受けた佐武が、その場で花屋に連絡を入れるが、どうやら相手が出ないらしい。
会合まで後一時間足らず。だが、早い者なら三十分もすれば到着するだろ。
たかが花。だが、会場の準備も満足に出来てないとあっては、沽券にかかわる。
「まだ連絡は付かねえのか!!」
イライラと龍二が叱責を飛ばしたところで、俺の裾を控え目に香織が引っ張った。
緊張して若干青ざめた表情の香織に、余計なもんを見せて無駄に怖がらせてしまったと、忌々しく佐武を睨みつけた。
怯える香織の腰を抱き寄せ、大丈夫だと囁いてやれば、強張った体から僅かに力が抜けた。