貴方の愛に捕らわれて
 

ここは今夜の会場になる部屋だ。昼頃には既に部屋は整えられていた筈だが、床の間の花にまで気が回らなかったようだ。



舌打ちしそうになるのをこらえて龍二を見れば、龍二も渋い顔で佐武を呼ぶ。



龍二から指摘を受けた佐武が、その場で花屋に連絡を入れるが、どうやら相手が出ないらしい。



会合まで後一時間足らず。だが、早い者なら三十分もすれば到着するだろ。



たかが花。だが、会場の準備も満足に出来てないとあっては、沽券にかかわる。



「まだ連絡は付かねえのか!!」



イライラと龍二が叱責を飛ばしたところで、俺の裾を控え目に香織が引っ張った。



緊張して若干青ざめた表情の香織に、余計なもんを見せて無駄に怖がらせてしまったと、忌々しく佐武を睨みつけた。



怯える香織の腰を抱き寄せ、大丈夫だと囁いてやれば、強張った体から僅かに力が抜けた。



 

< 419 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop