貴方の愛に捕らわれて
 

『今だけは特別なんです。もう少しだけ甘えさせてください。猛さん不足を補充したら、いつもの私に戻りますから』



そう言って大きな胸に頬を寄せれば、「そんなツレねえ事言わずに、ずっと甘えてろ」と言って逞しい腕が、ぎゅっと抱きしめてくれた。





フルスモークのベンツが、滑るように本宅の正面に横付けされると、甘い時間は終わりを告げた。



本当はもう少しだけ甘えていたかったけど、忙しい中をわざわざ迎えに来てくれた猛さんに、これ以上の我が儘は言えない。



後ろ髪を引かれる思いで車を降りれば、数日ぶりに聞く出迎えの野太い声の大合唱。



若干顔を引きつらせながらも、直角に腰を折る男達に『ただいま』と返せば、背後から腰に腕が回され、ふんわり抱きしめられた。



更に上がった野太い声よりも、腰に回された腕にびっくりして振り返れば、そこにはニヤリと笑う猛さんがいた。



 

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