貴方の愛に捕らわれて
真っ赤なルージュがひかれた綺麗な口から語られる言葉は、理解出来ない音として頭の中を滑ってゆく。
呆然とする頭で唯一理解出来た言葉……
『……ほかの…ひと…』
時々、深夜帰宅した猛さんから、女の人の香水が香ることがあった。
その香りは一種類じゃないことにも、気がついていた。
だけど不安に思うことなんて一度もなかった。だって猛さんは、いつだって私のことを愛してると、言葉で、眼差しで、態度で示してくれていたから。
「身の程知らずというか、世間知らずというか。あの人もどうしてこんな面倒な子供に手を出したのかしら。
あの人の地位や実力からして、囲う女が一人だけなんて有り得ないでしょう」
馬鹿じゃないのとさげずむ視線に堪えられなくて俯けば、更に追い討ちをかけて容赦のない、冷たい言葉と憎悪がぶつけられる。