貴方の愛に捕らわれて
 

真っ赤なルージュがひかれた綺麗な口から語られる言葉は、理解出来ない音として頭の中を滑ってゆく。



呆然とする頭で唯一理解出来た言葉……



『……ほかの…ひと…』



時々、深夜帰宅した猛さんから、女の人の香水が香ることがあった。



その香りは一種類じゃないことにも、気がついていた。



だけど不安に思うことなんて一度もなかった。だって猛さんは、いつだって私のことを愛してると、言葉で、眼差しで、態度で示してくれていたから。



「身の程知らずというか、世間知らずというか。あの人もどうしてこんな面倒な子供に手を出したのかしら。


あの人の地位や実力からして、囲う女が一人だけなんて有り得ないでしょう」



馬鹿じゃないのとさげずむ視線に堪えられなくて俯けば、更に追い討ちをかけて容赦のない、冷たい言葉と憎悪がぶつけられる。



 

< 442 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop