貴方の愛に捕らわれて
突然突きつけられた現実が、うまく受け止められない。
やっと手にしたと思った幸せは、いとも簡単に指の間から零れ落ちてゆく。
幸せな時間は長続きしないもの……。どうして、そんな当たり前のことを忘れてたんだろう。
猛さんの腕の中が、あんまりにも安心出来たから、そんな当たり前のことを忘れちゃったんだ。
幸せが零れ落ちてゆくサラサラという音を、ぼんやりと聞きながら、押し潰されそうなほど胸が苦しいのに、涙は零れないんだなあと、どこか冷静に分析している自分がおかしかった。
あれから何にもする気が起きなくて、結局、昼食も夕食もとらなかった。
先程からずっと鳴り続けている内線電話の呼び出し音を、ぼんやりと聞きながらこれからの事を考えていたら、不意に誰かに肩を掴まれた。
恐怖でビクンと体が跳ね、喉からは声にならない悲鳴がヒュッと漏れる。
「勝手にドアを開けて申し訳有りません。さっきから何回かお声をかけたんですが、お返事がなかったもので。
内線にもお出にならないし、具合が悪くて倒れているのではないかと心配になりまして」