貴方の愛に捕らわれて
「今日、冴子が来たらしいな」
『はい。凄く華やかで綺麗な人ですね。それにとても親切で、私の変わりに本宅のお花を活けて下さるって』
「花?どうして冴子が出てくるんだ」
『テスト勉強とか、高校生活最後の年なんだから、友達と遊んだりする時間が必要でしょうって冴子さんが仰ってくれて。
それで私の代わりにお花を活けてくださるって』
平常心を装い、昼からずっと考えていた言い訳を口にすれば、猛さんは暫し無言で私の瞳をじいっと覗き込む。
猛さんに嘘をついた罪悪感は、私が思っていた以上で、胸がつきんと痛む。
痛みに顔を歪めそうになりながらも必死に耐え、どうか私の嘘に気がつかないでと祈るように見つめ返せば、ふいに太い腕が後頭部にまわされ、分厚い胸にぎゅっと押し付けられるように抱きしめられた。
猛さんは「そうか」とだけ呟くと、大きな手で私の背中を何度も何度も優しくなで、その温もりに安堵した私は、いつの間にか眠りの淵に落ちていった。