貴方の愛に捕らわれて
 

―――旦那様は、冴子様を同伴されたんだよ。



藤野さんの言葉が耳の奥で、ずっとリピートされる。



信じられなかった。


何かの間違いだと思った。




だって猛さんは私のことを、必要だって言ってくれたもの。あの言葉が嘘だなんて思えなかった。



そうだ、猛さんから直接聞いた訳じゃない。きっと藤野さんの勘違いか何かだ。


そうじゃなければ、何か事情があったとか……。



事情?事情って何……?



止めよう。猛さんが帰ってきたら、ちゃんと聞けばいい。


不安に駆られて、あれこれ考えたところで、ろくな事を思いつかないんだから。



そう思うのに、勝ち誇ったような藤野さんの笑い声が頭から離れず、気が付けば嫌な想像に胸が締め付けられる。



猛さんを信じる。私にはそれしかないんだから、考えちゃ駄目。



そう自分に言い聞かせても、直ぐに心の中は不安でいっぱになって、真っ黒に塗りつぶされてゆく。



 

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