貴方の愛に捕らわれて
 

いつもの事ながら、びっくりしてしまう。昨夜は兎も角、どうして朝食を食べなかった事まで知っているの?



それに、猛さんに言われて窓の外の景色に目をやれば、いつもの通学路とは明らかに違う道を走る車。



もしかしなくても病院に向かってる……。



猛さんの有無をいわさぬ過保護ぶりに、呆然としながら窓の外の景色を眺めていると、ふいに聞こえてきた声に、息が止まった。




「―――そろそろ朝食よ……」



電話口から聞こえてきた、女の人の声。



甘ったるく艶やかなその声は、先日聞いた冴子さんの声だった。




瞬間、私の中で何かが壊れた。



まるで心が粉々に砕けてしまったかのような、鋭い痛みが胸をえぐり、その痛みから守るかのように、私の心は薄い幕に覆われた。




二言、三言、猛さんと言葉を交わして会話を終えたけど、どう受け答えしたのかは、よく覚えていない。



そんな私を、ルームミラー越しに松野さんが心配そうに見ていたなんて、気づく余裕もなかった。



 

< 455 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop