貴方の愛に捕らわれて

始めて聞いた低くて力強い声は、彼のイメージ通りだなと、ぼんやり思った。




突然ふんわりとした温もりとスパイシーな香りに包まれた。



いつの間にか、彼が着ていたコートを脱いで、そっと私に羽織らせてくれていた。




『ぁ、あの……ごめんなさい………』



コートから感じる男の人の温もりと香りに、恥ずかしくなった私は、慌ててコートを返そうと彼を見た。




始めて間近で見た彼は、太い眉毛に鋭い一重の目が印象的な強面だったが、不思議と怖いとは思わなかった。



「着ていろ」



『でも、あなたが風邪を引いて……クシュン』



コート返そうとしたら、またくしゃみが出た。



「フッ… 俺は大丈夫だから着ていろ」



彼は、ほんの少し口角をあげて笑うと、コートの上から私の両腕をそっと押さえた。




彼の大きな手が、腕に触れた瞬間、私はピクリと飛び上がった。



「ッ…。すまん。怖いか?」




彼は私の反応に息をのみ、慌てて私から手を離し謝った。



 

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