ヴァンパイアヒューマン−桜−
そして、そんな二人は丘の上から見える王宮の下の街を静かに眺めた。
『ミーナ様、国王様におつかいを頼まれたのでしょう?良いのですか、早くお戻りにならなくても…』
ジャックは気になった事をミーナに尋ねた。
『別に良いわ。今夜のパーティーで使うパンだし、急いで持って帰らなくても大丈夫よ』
ミーナは景色を眺めながら告げた。
『そうですか…』
ジャックも景色を眺めながら頷いた。
『ねぇ、ジャック。王宮の外では敬語はやめてよ。あたしたち幼なじみなんだしさ』
ミーナはそう言って、ジャックの顔を覗きこんだ。
『ダメですよ。王宮の外に出てもミーナ様はミーナ様で、私は王宮の剣士なんですから』
ジャックは首を横に振り、きっぱりと言った。
『うふふ。相変わらずね、ジャックは。そんなところは堅いわよね。バロンさんそっくりだわ』
ミーナはそう言って笑った。