魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ひとしきり唇を重ねた後…離れたのはティアラだった。
――燃え上がるようなキス…
ただそれがラスを失ったばかりのいっときの感情だったならば…と考えると、結局自分は捨石でしかないのだ。
それはつらい。
あの時だって、ラスの存在が重くのしかかり、傷つくとわかっていながらリロイに抱かれたのだから。
「ティアラ…?」
「私は…結婚すると決めました。あなたとのことは過去。しかも1度きりのこと。私を惑わせないで下さいリロイ。あなたはあなたの幸せを。私は…私の幸せを。私とあなたの道は交わらない」
ずぶ濡れのリロイの金の髪から水滴が落ち、見つめて来るやわらかな金の眼差しは狂おしいほどに美しく、ティアラは振り切るようにリロイの肩を押すと身体を隠すことも忘れて草の上に置いていた服を掴むとその場から足早に去った。
去りながら次々と涙が溢れ、2年経ってようやく結婚しようと決めて前進したはずなのに…リロイに会った途端また想いが胸から湧き上がり、この始末だ。
「私って…相変らず無様だわ」
明るく努めよう。
リロイだってすぐに過ちに気付くはず。
――自身に言い聞かせて皆が集まっている場所まで戻ると、火を囲んだ彼らはそれぞれ楽しそうに談笑していた。
とはいっても話が弾んでいるのはオーディンとローズマリーで、グラースは相変わらず独りで木に寄りかかって座り、瞳を閉じている。
「オーディンとローズマリーはいい雰囲気ですね」
「私もそう思う。歳がわからない同士いいんじゃないか」
「ちょっと聴こえてるわよ。私に歳の話はしないでほしいわ」
「私も幾つだったか忘れましたねえ。緩やかに歳は取ってるはずなんですけど…100年を過ぎた時数えるのはやめましたから」
笑いながらグラースの隣に腰かけるとすぐに肩に毛布をかけてくれて、男前なグラースにちょっとだけ頬を赤くした。
「リロイはどうした?」
「…さあ。グラース…私…結婚するの」
「知っている。…リロイのことを諦めきれないのか?」
「諦めたから結婚するの。私のこと…軽蔑する?」
「…いや。さあ、寝よう」
肩を抱いてくれた手のぬくもりが優しかった。
――燃え上がるようなキス…
ただそれがラスを失ったばかりのいっときの感情だったならば…と考えると、結局自分は捨石でしかないのだ。
それはつらい。
あの時だって、ラスの存在が重くのしかかり、傷つくとわかっていながらリロイに抱かれたのだから。
「ティアラ…?」
「私は…結婚すると決めました。あなたとのことは過去。しかも1度きりのこと。私を惑わせないで下さいリロイ。あなたはあなたの幸せを。私は…私の幸せを。私とあなたの道は交わらない」
ずぶ濡れのリロイの金の髪から水滴が落ち、見つめて来るやわらかな金の眼差しは狂おしいほどに美しく、ティアラは振り切るようにリロイの肩を押すと身体を隠すことも忘れて草の上に置いていた服を掴むとその場から足早に去った。
去りながら次々と涙が溢れ、2年経ってようやく結婚しようと決めて前進したはずなのに…リロイに会った途端また想いが胸から湧き上がり、この始末だ。
「私って…相変らず無様だわ」
明るく努めよう。
リロイだってすぐに過ちに気付くはず。
――自身に言い聞かせて皆が集まっている場所まで戻ると、火を囲んだ彼らはそれぞれ楽しそうに談笑していた。
とはいっても話が弾んでいるのはオーディンとローズマリーで、グラースは相変わらず独りで木に寄りかかって座り、瞳を閉じている。
「オーディンとローズマリーはいい雰囲気ですね」
「私もそう思う。歳がわからない同士いいんじゃないか」
「ちょっと聴こえてるわよ。私に歳の話はしないでほしいわ」
「私も幾つだったか忘れましたねえ。緩やかに歳は取ってるはずなんですけど…100年を過ぎた時数えるのはやめましたから」
笑いながらグラースの隣に腰かけるとすぐに肩に毛布をかけてくれて、男前なグラースにちょっとだけ頬を赤くした。
「リロイはどうした?」
「…さあ。グラース…私…結婚するの」
「知っている。…リロイのことを諦めきれないのか?」
「諦めたから結婚するの。私のこと…軽蔑する?」
「…いや。さあ、寝よう」
肩を抱いてくれた手のぬくもりが優しかった。