魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
それからはティアラと普通に話すことができた。
とはいっても一国の王女を長時間馬に乗らせるわけにもいかず、最初は馬上の人だったのだが頂上付近に着いた時ティアラを馬車へと促した。
「魔物が襲ってきたら防ぎきれませんからあなたは馬車の中へ」
「…はい…」
まだ話し足りていないというように少し唇を尖らせて馬車の中へ消えてゆくと、ローズマリーが小さく笑って馬を寄せてきた。
「いい雰囲気じゃない?婚約者から奪っちゃえば?」
「…いえ。ラスを諦めたとはいえ、僕の中では生涯ラスが1番です。ラスのために生きてきたのだから早々変えることはできません」
「そりゃコハクを刺そうって思うくらい憎くなるわよね。ま、再会したら一発殴られる覚悟はしておいた方がいいかも」
「殺されてもおかしくありません。覚悟は…できています」
――その時…
空からくぐもった不気味な低い声が降ってきた。
「この山を越えようとは度胸がある」
身構えながら空を仰ぐと、空には真っ黒な狼に翼がついた魔物が口を歪めて笑っていた。
「…まずいわ…逃げ場がないわね…」
頂上へと着き、馬車を隠す場所もないためにリロイは気取られないように皆からゆっくりと離れながら馬上で剣を抜いた。
「魔法の匂いがするし、女の美味そうな匂いもする…。1番美味そうな匂いがするのは…この中だ!」
急降下した魔物が鋭い爪で馬車を掴み、持ち上げた。
中からは小さな悲鳴が聴こえ、リロイは即座に馬を走らせて持ち上げられようとしていた馬車の屋根へと飛び乗ると、右脚を切り落とすと悲鳴が迸る。
先程は冷静に喋っていた魔物はがむしゃらに暴れ、その拍子で馬車の扉が開くとティアラが空中に放り投げだされ、その姿がスローモーションに見え、息を呑んだ。
「ティアラ!」
「あなたが受け止めなさい。私が魔物を」
魔物をオーディンに任せて地上に叩き付けられようとしていたティアラをスライディングしながらなんとか受け止めると…その小さくて細い身体は恐怖にがたがたと震え、安心させるように1度抱きしめて笑った。
「僕を見ていて」
あなたのために、戦う。
とはいっても一国の王女を長時間馬に乗らせるわけにもいかず、最初は馬上の人だったのだが頂上付近に着いた時ティアラを馬車へと促した。
「魔物が襲ってきたら防ぎきれませんからあなたは馬車の中へ」
「…はい…」
まだ話し足りていないというように少し唇を尖らせて馬車の中へ消えてゆくと、ローズマリーが小さく笑って馬を寄せてきた。
「いい雰囲気じゃない?婚約者から奪っちゃえば?」
「…いえ。ラスを諦めたとはいえ、僕の中では生涯ラスが1番です。ラスのために生きてきたのだから早々変えることはできません」
「そりゃコハクを刺そうって思うくらい憎くなるわよね。ま、再会したら一発殴られる覚悟はしておいた方がいいかも」
「殺されてもおかしくありません。覚悟は…できています」
――その時…
空からくぐもった不気味な低い声が降ってきた。
「この山を越えようとは度胸がある」
身構えながら空を仰ぐと、空には真っ黒な狼に翼がついた魔物が口を歪めて笑っていた。
「…まずいわ…逃げ場がないわね…」
頂上へと着き、馬車を隠す場所もないためにリロイは気取られないように皆からゆっくりと離れながら馬上で剣を抜いた。
「魔法の匂いがするし、女の美味そうな匂いもする…。1番美味そうな匂いがするのは…この中だ!」
急降下した魔物が鋭い爪で馬車を掴み、持ち上げた。
中からは小さな悲鳴が聴こえ、リロイは即座に馬を走らせて持ち上げられようとしていた馬車の屋根へと飛び乗ると、右脚を切り落とすと悲鳴が迸る。
先程は冷静に喋っていた魔物はがむしゃらに暴れ、その拍子で馬車の扉が開くとティアラが空中に放り投げだされ、その姿がスローモーションに見え、息を呑んだ。
「ティアラ!」
「あなたが受け止めなさい。私が魔物を」
魔物をオーディンに任せて地上に叩き付けられようとしていたティアラをスライディングしながらなんとか受け止めると…その小さくて細い身体は恐怖にがたがたと震え、安心させるように1度抱きしめて笑った。
「僕を見ていて」
あなたのために、戦う。