魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
2年前のリロイは白騎士団の隊長という地位にはあったが、強国ゴールドストーン王国を攻めてくる国があるはずもなく、形だけだったかもしれない。
魔物と戦うこともなく、形式通りの型しか持たず、実践で通用するには程遠い腕だった。
…だが今目の前で戦っているリロイは…違った。
脚を失って暴れまくる魔物に果敢に向かってゆき、素早い動きを見定めて的確に魔物の命を削ってゆく。
これこそが、求めていた“勇者様”の姿。
…結婚する予定の男は勇者の姿とは程遠く、しかも年上で、良いところといえば優しいところくらいだ。
それでも王国を継ぐ者としての運命を全うしなければならない。
血筋も良く、しかも婿養子に来てくれる男に勇者の理想像を求めてはならない。
そう自身に言い聞かせてようやく決断したのに――
「ぎゃぁーーっ!」
叫び声が耳をつんざき、まだ震えの収まらない身体を縮めていると…頭を抱えて俯いていた自分の前に、リロイのブーツが見えた。
「終わりましたよ。怪我はしていませんか?」
「私より…リロイ、あなたの方が…」
真っ白だったマントは血に濡れ、左腕には鋭い鉤爪で引っ掻かれたのか裂傷を負い、見るも無残になっていた。
「治療を…!リロイ、馬車に乗って下さい!」
「私たちは外で待っていますから、ごゆっくり」
共に戦っていたグラースは無傷で、安心してリロイを馬車に乗り込ませると少し不服そうな顔をしていたので顔を覗き込むと…
「僕だけが怪我をして、グラースは無傷なんて…。悔しいな」
「あなたは立派でしたよ。私を助けてくれたし、止めを刺したのもあなたでしょう?さあ、腕を出して」
集中して神に祈りの言葉を捧げると掌に白い光が集まり、患部に翳すとゆっくりと傷口が閉じていった。
それを2人で見つめながら、沈黙に耐えられなくなったティアラが早口でリロイを誉めた。
「強くなりましたね。2年前も強かったけれど…魔王はもっとすごかったからあの時はあなたは霞んでいました」
「2年間ずっと魔物と戦っていたんです。自己を鍛錬するために。…ラスへのやりきれない想いをいっときでも忘れるために」
2年間、捉われていた。
魔物と戦うこともなく、形式通りの型しか持たず、実践で通用するには程遠い腕だった。
…だが今目の前で戦っているリロイは…違った。
脚を失って暴れまくる魔物に果敢に向かってゆき、素早い動きを見定めて的確に魔物の命を削ってゆく。
これこそが、求めていた“勇者様”の姿。
…結婚する予定の男は勇者の姿とは程遠く、しかも年上で、良いところといえば優しいところくらいだ。
それでも王国を継ぐ者としての運命を全うしなければならない。
血筋も良く、しかも婿養子に来てくれる男に勇者の理想像を求めてはならない。
そう自身に言い聞かせてようやく決断したのに――
「ぎゃぁーーっ!」
叫び声が耳をつんざき、まだ震えの収まらない身体を縮めていると…頭を抱えて俯いていた自分の前に、リロイのブーツが見えた。
「終わりましたよ。怪我はしていませんか?」
「私より…リロイ、あなたの方が…」
真っ白だったマントは血に濡れ、左腕には鋭い鉤爪で引っ掻かれたのか裂傷を負い、見るも無残になっていた。
「治療を…!リロイ、馬車に乗って下さい!」
「私たちは外で待っていますから、ごゆっくり」
共に戦っていたグラースは無傷で、安心してリロイを馬車に乗り込ませると少し不服そうな顔をしていたので顔を覗き込むと…
「僕だけが怪我をして、グラースは無傷なんて…。悔しいな」
「あなたは立派でしたよ。私を助けてくれたし、止めを刺したのもあなたでしょう?さあ、腕を出して」
集中して神に祈りの言葉を捧げると掌に白い光が集まり、患部に翳すとゆっくりと傷口が閉じていった。
それを2人で見つめながら、沈黙に耐えられなくなったティアラが早口でリロイを誉めた。
「強くなりましたね。2年前も強かったけれど…魔王はもっとすごかったからあの時はあなたは霞んでいました」
「2年間ずっと魔物と戦っていたんです。自己を鍛錬するために。…ラスへのやりきれない想いをいっときでも忘れるために」
2年間、捉われていた。