魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
下りに差し掛かり、上空は木の葉が生い茂った木陰だったので、空からの攻撃は防ぐことができた。

ここ2年間魔物と戦い続けてきたので、自分の腕が上がっていることに自信を持って対峙することができた。


「強いですね、がむしゃらに魔物を狩ってきただけあります」


「憂さ晴らしには持ってこいでしたから…。自分の腕も上がるし魔物も駆逐できるし、一石二鳥です」


「そういえばコハク様もよく……なんでもありません、今のは聴かなかったことに」


…最高に胡散臭いが、今までの経験でそれを訊ねても教えてくれないのは明白なので、リロイは無視を決め込んで山下りに専念した。


「下りきったらどのあたりに出るんですか?」


「イエローストーン王国の近くですよ。あそこはもう人が住めない場所になってしまいましたが…人の業のなせる業とでも言いますか。水晶に手を出したばかりに惨いことになったものです」


「できるなら凍った人々を弔ってあげたいのですが…触れるととてももろくて崩れてしまったんです。どうにかできないかな」


真剣に考え込むリロイの傍にグラースが馬を寄せると鐙をぶつけて気を引き、小さく微笑んだ。


「ラスがイエローストーン王国を再建したいと言っていた。お前も手伝ったらどうだ?」


「…でも僕は…」


「信頼を再び勝ち取るチャンスだと思うぞ。出奔はその後でもいいと思う」


「僕が出奔することをあなたは知って…?」


「もうラスの傍に居れないと思っているんだろう?甚だしい勘違いだがお前の決断なら引き留めない。その前にラスが手助けを求めてきたらそれに応えろ。その後好きにしたらいい」


「グラースったら男前ねえ」


ローズマリーが茶化したが、グラースは2年もの間始終ラスの傍に居て、ラスの想いを聴いてきた唯一の人物。

そのアドバイスを無下にもできず、リロイが答えを出しかねていると、オーディンは下りの最終地点を視界に入れながら、呟いた。


「コハク様はラス王女とあなたの仲を除けばあなたのことを気に入っていたと思いますよ。再会したらよく話してみて下さい」


「…はい」


――許してもらえるだろうか?

2年間もの歳月を奪った僕を――
< 109 / 728 >

この作品をシェア

pagetop