魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「男女の友情ってありますよね?」


ティアラと隣同士の部屋を取り、ティアラの部屋でお茶をご馳走になっていた時突然そう切り出してきたので思わず咳き込んだ。


「ごほっ、え、いきなりどうしたんですか?」


「私…友達はラスとグラースしか居ないんです。だからあなたともお友達になれたらって思って…」


ソファに座り、膝に置いたティーカップはかたかたと揺れていて、ティアラが緊張しているのが見てとれた。


…政略結婚はよくある話だ。

ティアラは次期女王として婿を取らねばならず、しかも色恋とは程遠い神聖な暮らしを送っていたはずだ。


そんなティアラの純潔を奪い、ラスだけではなくティアラまで悲しませてしまったのは自分の業。

ティアラが自分との友情を望むのならば、その通りにしてあげたい。


「もう僕たちは仲間じゃないですか。仲間は友情より上の関係だと思います。何度あなたの言葉に励まされたことか…。僕が王国を出奔して身分が低くなってもあなたが今のように接してくれるのなら、とても嬉しいです」


「もちろんですっ。ああ、ずっとそれを聞きたかったの。ようやく安心できました」


嬉しそうに微笑み、節目がちになったティアラの陰影がついた横顔は美しく、リロイもまた不安な想いをティアラに聴いてほしくてティーカップをテーブルに置いて背を正した。


「僕はラスになんて言えばいいと思いますか?なんて言えばラスは僕を許してくれるでしょうか」


「もう謝罪はしなくていいと思います。あなたが普通通りに接すれば、ラスもいつものようにあなたを慕ってくれます。難しいことを長い間考えられる子ではありませんから大丈夫ですよ」


「そう、でしょうか。そうですよね、ラスは天真爛漫だから…僕も普通通りでいられるように努力します。ティアラ、聴いてくれてありがとう」


見つめ合う。

瞳を逸らさなければいけないのに黒ダイヤのような黒瞳に魅入られていると、ドアをノックする者が在った。


「食事の準備ができたそうです。コハク様はまだですが盛大に前祝いといきましょう。今日は無礼講ですよ」


ようやく前向きになれて、心の中で隣で微笑むティアラに感謝をした。
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