魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「…イ、リロイ、起きて下さいっ」


誰かにゆさゆさ身体を揺すられ、まだ寝ぼけていたリロイはその声が誰だか気付かなかった。


「ん…」


「ラスが!ラスが戻って来ましたよ!」


「…え!?」


飛び起きると、顔を覗き込んでいたティアラの額と額が結構激しくぶつかり、2人して額を押さえてうずくまると、ドアの付近に立っていたグラースが吹き出した。


「早く会って来い。お前に会いたがっている」


「は、はいっ!ティアラ、すみません!」


とにかく早く会いたくて、駆け出した。

すでに城内の魔物たちが集結し始めている2階のバルコニーに飛び出ると…


そこには朱い鳥と碧い鳥を従えたラスが明けた空を見上げながら大きく伸びをしていた。



「ラス…」


「あ、リロイ!ただいまっ!」


「わ、わっ」



急に飛び付いてきたので背中から倒れ込みながらラスが怪我をしないように腰を支えると、馬乗りになってきたラスはにこにこ笑って誰かを見上げる風な仕草をした。


「コー、そんなこと言っちゃ駄目だよ。喧嘩は駄目っ」


「…え?そういえば影はどこに…?」


「ここに居るの。ちょっと今見えなくなってるんだけど本当にここに居るんだよ」


ラスが右上を見上げ、指を差すけれどそこには誰も立っていない。

気でも触れたのかと思って顔面蒼白になっていると、オーディンがラスの右側で片膝をつき、恭しく頭を下げた。


「お帰りなさいませコハク様。お待ちしていましたよ」


「…か、影は本当にそこに居るんですか?」


「ええ、大変ご立腹中ですよ。“チビにべたべた触るんじゃねえ!”…とおっしゃっておられます」


「…だから触られてるのは僕の方…」


――久々のやりとりに視界がぼんやりと霞んだ。

ラスは相変わらず馬乗りになってきたまま顔を寄せて頬にキスをしてきて、魔王を取り戻したことでラスから許しを得たのだと強く実感した。


「ねえ、私の冒険談聞きたいでしょ?すごかったんだよ、ドラゴンともお友達になったんだから!」


「ラス!」


「きゃーっ、ティアラ!グラース!お師匠さん!」


明るい声が響き渡る。
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