魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
父の腕に抱き着くとすぐに抱き上げてくれて、魔王はいらいら足踏みをしながら自分を落ち着けるために盛大に息をついた。
『まあカイはチビの父親だから許してやるよ』
「お父様、コーは今ここに居るの。見えなくなってるんだけど、見えるようになるためには聖石の間に行かなきゃいけないの。…私がやらなきゃ」
「魔王が?ここに?…ラス…君の強い心には本当に敬服するよ。小さなお姫様だと思っていたけれど、ちゃんと成長しているんだね」
『そうだぞチビはあちこち成長したんだからな!カイ、そろそろ抱っこやめろよ、もういいだろ!』
…結局は父親であれ見事なやきもちを妬く魔王の通訳をラスもオーディンも敢えてしなかった。
さすがのラスにも徐々に緊張感が高まり、胸に手を置くとゆっくりと深呼吸をして下ろしてもらい、コハクを見上げた。
もうやるしかないのだ。
コハクがリロイから刺された瞬間は眠っていたので、実際は見ていないが…
悪夢なら何度も見た。
見たことのない光景のはずなのに、コハクが血の海に倒れ伏す光景を何度も夢の中で見て、何度泣いたことか――
「私とコーだけでいいから。誰にも見られたくないの」
「…じゃあ入り口まではついて行くよ。私のプリンセス、君は独りじゃないよ。こんなに心強い仲間を得て旅をしてきたのだから、彼らだって君のことが心配なんだよ」
「うん。みんな、一緒について来てくれる?」
――何も魔王の帰還を待っていたのはラスだけではない。
魔王を失って抜け殻になってしまったラスを全員が知っているのだから、ラスと魔王が幸せそうに笑っている光景…2年前までは当たり前だった光景を取り戻すためにはどんな努力でも惜しまない。
「ラス、私たちがついているわ」
「ティアラ…ありがとう。リロイ、後でコーと喧嘩になると思うけどやりすぎちゃ駄目だよ」
「それは僕にじゃなくて影に言ってよ。僕が危なくなったらラスが助けてね」
『ふざけんなガキが。甘えんじゃねえよ』
ぶつぶつ文句を言って赤い瞳を爛々と輝かせるコハクの頬に手を伸ばし、感触をまだ得ることはできないけれどコハクもまた手を伸ばして頬に触れる仕草をした。
ようやく――
『まあカイはチビの父親だから許してやるよ』
「お父様、コーは今ここに居るの。見えなくなってるんだけど、見えるようになるためには聖石の間に行かなきゃいけないの。…私がやらなきゃ」
「魔王が?ここに?…ラス…君の強い心には本当に敬服するよ。小さなお姫様だと思っていたけれど、ちゃんと成長しているんだね」
『そうだぞチビはあちこち成長したんだからな!カイ、そろそろ抱っこやめろよ、もういいだろ!』
…結局は父親であれ見事なやきもちを妬く魔王の通訳をラスもオーディンも敢えてしなかった。
さすがのラスにも徐々に緊張感が高まり、胸に手を置くとゆっくりと深呼吸をして下ろしてもらい、コハクを見上げた。
もうやるしかないのだ。
コハクがリロイから刺された瞬間は眠っていたので、実際は見ていないが…
悪夢なら何度も見た。
見たことのない光景のはずなのに、コハクが血の海に倒れ伏す光景を何度も夢の中で見て、何度泣いたことか――
「私とコーだけでいいから。誰にも見られたくないの」
「…じゃあ入り口まではついて行くよ。私のプリンセス、君は独りじゃないよ。こんなに心強い仲間を得て旅をしてきたのだから、彼らだって君のことが心配なんだよ」
「うん。みんな、一緒について来てくれる?」
――何も魔王の帰還を待っていたのはラスだけではない。
魔王を失って抜け殻になってしまったラスを全員が知っているのだから、ラスと魔王が幸せそうに笑っている光景…2年前までは当たり前だった光景を取り戻すためにはどんな努力でも惜しまない。
「ラス、私たちがついているわ」
「ティアラ…ありがとう。リロイ、後でコーと喧嘩になると思うけどやりすぎちゃ駄目だよ」
「それは僕にじゃなくて影に言ってよ。僕が危なくなったらラスが助けてね」
『ふざけんなガキが。甘えんじゃねえよ』
ぶつぶつ文句を言って赤い瞳を爛々と輝かせるコハクの頬に手を伸ばし、感触をまだ得ることはできないけれどコハクもまた手を伸ばして頬に触れる仕草をした。
ようやく――