魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
その日は、翌朝になるまでずっとラスの部屋に閉じこもって愛し合い、少し眠ってはまた愛し合う…その繰り返しで、1つの生き物のように溶け合った。


綺麗になったラスから手が離れようとしない。

視線も離れようとしない。

2年前はまだ幼い印象だったが、今はぐっと大人っぽくなり、コハクを惑わせる。

しかし中身はあのまま。

そのギャップが魔王にとっては…恐ろしく萌えポイントだった。


「ふふふふふ…チビめ、俺は朝夜関係ないからな。チビおはよ、またしよ………あれ?」


そういえば腕枕をしてやっていたはずのラスが隣に居ないので、急に心細くなったコハクはがりがりと髪をかき上げながら床に散らばっていた黒シャツと細身の黒のパンツに手を伸ばして着ていると…


廊下から何かがらがらと音がしたのでドアを開けてみると、ラスが白のカートを押しながら手を振って来た。


「あ、コー、おはよ」


「ん、おはよ」


ちょっと照れくさそうに挨拶を交わし、白のガウン姿のラスを部屋に入れると、カートの上に乗っているベーグルサンドに顔を寄せた。


「作ってもらったのか?そういや腹減ったなあ」


「でしょ?あのね、これね、私が作ったんだよ!」


……ラスがこんなの作れるわけがない。

“冗談だろ?”と言おうとすると、ラスは野菜やハムやチーズを挟んだベーグルサンドとスクランブルエッグとフルーツと紅茶をてきぱきとテーブルに乗せた。

…とても嘘をついているようには見えないので、得意満面のラスの肩を抱いてソファに座ると、恥ずかしそうにもじもじし始めた。


「あのね、コーに喜んでもらおうと思ってお料理の練習してたの。グラースが教えてくれたんだよ、それでねっ」


「チビ…俺…マジで感動!チビの手料理!もったいねえ、食べたくねえし!」


「駄目、食べてっ!早く早く!」


わくわくしきりのラスの期待に応えるためにベーグルサンドを手にして思いきりかぶりつくと、味もとても美味しくて、口の端についたチーズをラスが横からぺろんと舐めた。


「!」


「美味しい?」


「美味いぜチビ!…で、またチビも食べてえ!」


「きゃー!」


…色ぼけに拍車がかかる。
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