魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「今年…中ね。それは面白いな。では猶予は1年ということで、それ以上は絶対に待たないよ。いいんだね?」


「うん、わかった!コーはなんでもできるんだから大丈夫!ね、コー!」


きらきらした瞳で見上げて来るラスにほとほと困り果てたコハクは、抱っこをせがむラスを抱き上げて何も言わずに背を向けて出入り口に向かった。


「失敗したらラスには2度近付かないようにしてもらう。わかっているな?」


「…ああ。ちっ、性格悪い勇者だぜ」


「お前には負けるよ」


コハクが背を向けるとようやく母のソフィーが顔を上げ、小さく微笑んでくれたので、母の態度が父よりも心配だったラスは何度も手を振った。


「お前はー!どうしてあんな確約取りつけたんだよ。1年だぞ1年!凍った奴らをどうするかも決まってねえのに」


「え?コーならどうにかできるでしょ?え?え?できるの?できないの?」


――“まさかできないって言うつもり?”と顔にでかでかと書かれているラスにがっかりされたくない。

がっかりされたくはないけれど、今すぐに取りかからなければ1年なんてあっという間に過ぎて行ってしまう。


「うーん……1年…厳しい…。まず何から手をつけりゃいいのか…」


コハクが黙り込んでしまい、ラスはコハクをどう説得すればやる気になってくれるのか必死に考えた結果…


首に抱き着いて耳元でこそっと可愛らしい声で囁いた。



「頑張って、私だけの勇者様」


「……俺!やるし!できるし!」



…魔王を掌でころころ。


ラスにしかできない離れ業で見事にいとも簡単に魔王を手懐け、ちゅっと耳にキスをすると魔王の頭から湯気が立ち上った。


「ち、ち、チビっ、お前なんか色気出て来たな…。女って…変わるもんだなあ」


「コーが私を変えたんだよ?ねえコー、一緒に頑張ろうね。コーとならなんでもできると思うの。私もすっごく頑張るから」


身体を起こして見つめ合うとラスが赤いネクタイを引っ張り、、コハクがはにかみながら額を額にこつんとぶつけた。


「わぁった。俺も頑張るし。何せ俺はチビだけの勇者様だからさー!」


掌で、ころころ。

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