魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスがコハクと一緒に居る時はなかなか会えないので、ティアラとグラース、ローズマリーといった女性陣がラスに会いに押しかけてきた。


「ラス、一緒にお茶をしましょうよ」


「あっ、ティアラたちだ!」


もっとラスといちゃいちゃしたかったコハクは唇を尖らせたが、俄然無視したラスがドアを開けて招き入れると、彼女たちの手を引いて中へと招き入れた。


「邪魔するぞ」


「ほんっと邪魔。さっさと茶を飲んでさっさとチビを解放しろよな」


「それはこっちの台詞よ。あらあら、また真っ黒になっちゃったのね」


マント姿のコハクをローズマリーが茶化すとラスがにかっと笑ってコハクを襲うようにしてマントを剥ぎ取った。


「見て!コーが白いシャツ着てるの。似合うでしょ?」


「魔王が黒以外の服を着てるのをはじめて見たわ…」


得意満面のラスに対して、コハクはちょっと恥ずかしくなってしまい、熱視線を送ってくる女性陣たちから逃げるようにロッキングチェアから腰を上げるとラスの頬をちょんと突いた。


「すぐ戻って来るからな。すぐ終わらせろよな」


「うん、わかった」


…返事が早すぎる。

また唇を尖らせながらコハクが居なくなると、ようやく好き勝手言うことができるようになった面々はカートを中に引き入れててきぱきとお茶の用意をした。


「どこへ行っていたの?コハクは何をしていたの?」


「えっとね、四精霊さんたちが居るところ。ドラゴンさんも居たしウサギさんやリスさんやウサギさんも喋ってたの。コーにはすぐ会えたんだけどサラマンダーさんから試練を与えられて…」


――精霊界。

そのすごさは魔法に疎いグラースにはよくわからなかったが、ティアラとローズマリーは顔を見合わせて目を真ん丸にした。


「コハクは…四精霊に匿われていたの?ラス王女…あなたが独りで旅を?」


「うんっ。とっても大変だったんだけど、コーに会いたかったから…」


…もうひとりでは何もできない自分ではない。

だがコハクは自立を許さないので、コハクと居る時はコハクの好きにさせようと思っている。


ようやく、会えたのだから。
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